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19 衝撃 【アースクエイク】 ①

19 衝撃
19-①


大阪出張を終えた悠が東京に戻り、話していたようにご両親が愛知からやってきた。

その2日後、私たちは待ち合わせをして、食事をすることにする。

今日は私のリクエストもあり、和風の店。

冬になると掘りごたつをするのだとわかる畳の席は、脚を下に出来るため、

座っているのも楽だった。


「こうして会っておいて言うのもおかしいけれど、いいの?」

「何が」

「だって、ご両親いらしているのでしょう」


ご両親があの部屋に来ているのなら、一緒に食事をしなくていいのだろうかと、

単純な疑問を言ってしまう。


「来るのを待っていた小学生ではないからね。向こうも理由があって来ているし。
今日は、仕事の都合でと、それなりには誤魔化したよ」


悠は、昨日、今、お付き合いをしている人がいると、

私の名前を出したことを教えてくれた。


「父は冷静にそうかって頷いて、母はなんだかそわそわしていてさ。
写真はないのかって聞くから……」


悠は携帯を取り出し、先日出かけた水族館での写真を見せてくれる。


「ほら、テラス席で食べているとき、これ、撮っただろ。それを思い出して、
見せたんだ」


二人で並んで、自撮りしたもの。


「あぁ……あれね」


画面に入るようにと、結構、体を密着させていた気がするけれど、

お義母さんは、積極的な女だと、思っただろうか。


「名前はとか、年齢はとか、色々と聞かれたから、中谷未央さんといって、
28歳。職業は編集者だよと、そう言っておいた」

「うん……」


顔を見たわけでも、ご挨拶をしたわけでもないのに、

話を聞いているだけで緊張した。

今更、人生を作り直すわけにはいかないので、

今の私を、そのまま感じてもらうしかないのだけれど。


「まぁ……そういうことかな」


悠は、私の顔が緊張していると思ったのだろう。

私の鼻の先に、人差し指を置く。


「はい、リセット」

「エ……」

「そんなに緊張する必要なんてないよ。未央は大丈夫」


悠は、せっかくこうして食事をするのだから、いつのもように笑顔でいて欲しいと、

素直に気持ちを話してくれる。


「うん……」

「僕が、一目ぼれをしたんだよと話したらさ、母は目を丸くしていたよ」



『一目ぼれ』



そういえば、悠は最初の飲み会で『一目ぼれ』をしたと、

以前、話してくれた。


「リセットって言ったのに、またそういうことを言う」


私は、また緊張すると、それでも笑いながら言い返す。


「一目ぼれしたときよりも、もっと、もっと、好きになっているんだって、
そうさらに押しておいた」

「……信じられない」


悠は『そうかな』と笑っている。

あんまり色々吹き込まれてしまうと、お会いするときに、緊張して、

ガチガチになりそうだ。



『お会いするとき』



私、そんなことを自然に考えている。

悠の相手として、見てもらおうと……



その日は、食事をして駅で別れることになった。

私は地下鉄、悠はそのまま前のホームから乗り込むことになる。


「はぁ……」

「どうしたの」

「親に、早く帰ってくれないかなと、言いそうになるよ」


悠はそういうと、私の耳に軽く触れる。

たったこれだけのことなのに、瞬間的に、スイッチが入りそうになった。


「そういうことを言わないの」


精一杯、余裕のあるふりをして悠と別れ、先にある階段を下りていく。

私たちと同じように、食事を外で済ませた人たちが、

手にお土産を持ったり、仕事の封筒を持ったりしながら、

駅に電車が来るのを、並んで待った。





『園田さん、ありがとうの会』


その当日がやってきた。

天気は朝から小雨。私はその日の仕事をしっかりこなし、二宮さんの戻りを待つ。

今日の彼女は、印刷所に向かった後、1本取材をして戻ってくるはず。


「おい、これじゃダメだろう」


編集長の声が聞こえる。

怒られているのはきっと、4月から編集部に入ってきた新人、塚田君だろう。

うちの出版社が出している『格闘雑誌』が好きで、入社試験を受けたが、

配属されたのは、なぜか情報誌だった。

格闘の記事が全くないとは言えないが、女性をターゲットとしているところが多く、

希望が叶うのはなかなか難しそうだ。

編集長は、数年勉強させたら、配置換えをしてもらうつもりだと言っていたが、

あのテンポだと、エネルギッシュな格闘雑誌の編集部員に、

さらに怒鳴られそうな気がしてしまう。


「はぁ……」


塚田君の席は、私の横。

先輩としてここは、少し話を聞くべきだろうか。


「どうした、新人」

「いえ、あ、はい。新人です」


別にポジションを聞いたわけではないのだが。

まぁ、怒られたときは、余裕などないだろう。


「しょげたらダメよ。編集長に怒られるのは、みんな一緒」

「……はい」


塚田君は、印刷した原稿を広げ、容赦なく消された部分を見た。



19-②




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テーマ : 恋愛小説
ジャンル : 小説・文学

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育てた怪獣2匹は、すっかりかわいさを無くしたため、今や『犬愛』に目覚めたお気楽主婦です。日々のちょっとしたこと、趣味で取り組んでいる『創作』を、このブログに書いていきたいと思っています。
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