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20 出来ない相談 【ブルームーン】 ②

20-②


「住所を聞いた私は、彼のマンションまで行って、
今度は部屋に入れて欲しいと言ったの。飲み会をしようとお酒を持っていき、
強引に入れてもらったこともある。でも、それだけだった。
啓太さんに受け入れて欲しいといくら私が願っても、彼は全く振り向かず、
そんなことを2回、繰り返した後の日にね……」


園田さんの言葉が止まる。

続きはと知りたくなるが、私は黙っているしかない。


「啓太さんがテーブルに、薬をものすごく一杯並べたの。
市販の風邪薬や、頭痛薬、それに種類はわからないけれどとにかく色々と。
どんな薬なのか、どう効果があるのかわからないでしょう。
でも、この量をもし飲んでしまったら、もしかしたら……死ぬかもと思える量」


園田さんは、思い出したのか、辛い顔をする。


「あなたが未央に何かを話すというのなら、俺は、それを知った瞬間に、
これを全て飲みますからって……そう、脅迫返しをされた」

「全て……ですか」

「そう……。園田さんは、未央にとって大切な仕事の相手なので、
傷つけることは出来ないと思い、ここまで従ってきたけれどって。
その時、私はなんて最低なことをしていたのかと、初めて気付いた」


あらゆる薬を用意し、自分を受け入れない啓太の本気を、園田さんは悟った。


「ごめんなさいととにかく謝ったわ。こんなつもりじゃなかったの。
ただ、素敵な人だと憧れて、少し話しが出来たらと、最初はそう思っただけなのに。
中谷さんが離れたのならって、いつの間にか……」


恋心は、思いを勇気にも凶器にも変えてしまう。

私は、啓太がこんな思いの中にいたのかと初めて知り、自然と涙が浮かぶ。


「その場で泣いた私を、啓太さんは黙って待っていてくれた。
気持ちが落ち着いた後にね、もうこういうことはしないから、
一つだけ教えて欲しいと言ったの」


園田さんは、指を1本立てる。


「それほど思っているのなら、どうして別れてしまったの……と」


そうだった。私と啓太。

『未来』を作っていきたいと言った私。

二人に、未来は作れないと言った啓太。



「未央が望む未来を、自分は与えられないからって……」



私の望む未来……

啓太と一緒に生きて、家族になって、そして子供……



そう、子供……



『毎日を……1日ずつ……』



「未央の望む未来が、変わったから……って」





思い出した。

私、啓太に自分から言った。





未来は、毎日を続けていくことだと……





『毎日を……1日ずつ……』

『1日ずつ?』

『そう。病気になってもならなくても、人はいつどうなるのかわからない。
毎日、朝、おはようって、笑って挨拶できたら、それで『未来』なの。
だから、前向きになって……ダメですよ、諦めたら』





思い出した。

私は、『未来』とは、毎日を続けていくことだと、そう言ったのだ。

啓太は、それを続けていた。

私と会い、朝、おはようの挨拶をし、そして仕事に向かった。

疲れた後、全てを受け入れてくれて、目を閉じた後、明日も笑ってと……



未来を見ようとしなかったわけでも、避けてきたわけでもない。

啓太は、自分の出来るやり方で、未来を見続けてきた。



啓太が私の言葉に、『風向きが変わった』と言ったのは、

あの頃の気持ちと、変わったのかということ。

私は、『ブルーストーン』からの全てを忘れて、啓太のことなど考えず、

未来の構図を変えていた。



『未来は1日ずつと言ったのは君だ』

そう言って、責めることは……

私が啓太の病気から、体のことまで、思い出すということになる。



「その啓太さんを見ていたら、全てがわかった気がしたの。
啓太さんは、中谷さんを傷つけないように手離すしかなかった。
自分が醜くなれば、過去のことも思い出さないだろうと、そう思っていた。
だから、私はそこから、彼の手伝いをしたつもり。あなたに『病気』のことを言われ、
大丈夫だと余裕のあるふりを見せたの」


啓太は、自分が最低の人間になることで、私のプライドを守ってくれた。

私は、そんな啓太の演技に、少しも疑問符を持つこともなく、

ただ、罵って、腹を立てた。



『コレック』で悠と食事をしていた私を見た啓太の顔が、

穏やかに見えたのは、ここまで来たと言う、安堵かもしれない。



でも……



「啓太は……病気、結局、どうなんですか」

「そうなの。3年、先生に診せていなかったことはわかったけれど、
結果がどうなのか、今どうなっているのかは、わからない」


園田さんが啓太と病院で会ったのは、去年の秋だと言う。


「5年、再発がなければ、その箇所に関してはゼロと思っていいのが治療だから。
でも、病院に通ってきているのかとか、家族ではないし、聞けないでしょう」


確かにそうだ。

病院側も、プライバシーを守るために、言わないだろう。


「だからね、私、中谷さんに怒られることも承知で、今日はここへ来たの。
あなたがかき回して、今更と言われるかもしれない。
でも、彼を正面から支えられるのは、あなたしかいないから……」



支える……



今まで、ただ啓太のことを聞いていた。

必死に、どうしてこうなったのか、その意味を探っていた。

でも、現実に戻される。




私は、もう……

啓太を支える状態ではない。




「お願い、中谷さん」



園田さんの気持ちはわかる。

でも、私にはもう……




悠がいる。



20-③




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テーマ : 恋愛小説
ジャンル : 小説・文学

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育てた怪獣2匹は、すっかりかわいさを無くしたため、今や『犬愛』に目覚めたお気楽主婦です。日々のちょっとしたこと、趣味で取り組んでいる『創作』を、このブログに書いていきたいと思っています。
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なお、作品の無断転載やお持ち帰りはご遠慮ください。著作権は放棄していません。お願いします。

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