FC2ブログ

21 デリケートな神経 【アレキサンダース・シスター】 ①

21 デリケートな神経
21-①


こうなることはわかっていた。

だからといって、そうですかなんて引き下がれない。


「『悪性リンパ腫』で、何年も先生に経過を診せていなくて。
それで大丈夫だって言われても、そうですねってならないでしょう。
私は、啓太に前向きになってと、あの日言ったよね。私も頑張るから、
あなたもって……」


思い出した全てのことを、啓太に話していく。

私はもやもやした記憶の中から、言葉を探っているわけではない。


「一日ずつ積み重ねていけばいいと、私が言った……それが未来になると、そう言った。
それを私が忘れて、啓太と家族になるとか、子供がとか、傷つけるようなことを言った。
だから、もう……私たちは一緒に歩けないと、そう互いに判断してこうなった。
でも、心配するのはいけないの? あなたのことを心配するのは……
それも全て終わりにしないとならないの?」


友達でも近所の人でも、病気だと知れば心配するのだから。

啓太が大丈夫なのかと、心配しておかしいわけがない。


「未央……」

「何?」

「お前に心配されて、優しい言葉をかけられているのは、俺の望んだことじゃないから」

「エ……」

「未央と俺は、同等の立場でいたかった……それが出来なくなったら、嫌なんだよ」

「啓太……」

「お前にまた、泣かれるのは嫌なんだ」


啓太はそういうと、鍵を開け、扉の向こうに入って行く。

私は『まだ、話しは終わっていない』と言おうと思うものの、

言葉が出て行かなかった。



『同等でいたい……』



『ブルーストーン』で出会ってからの日々は、

確かに『同等でいたい』と思い、過ごしてきた。

会いたいときに会い、求めるものはしっかりと伝え合う。

男だから女だからというよりも、互いに認め合った間柄が、そこにはあった。



ただ、『好き』という思いが……

そこにはあった。



私は、啓太のマンションのエントランスから出ると、傘を差しながら駅に向かう。

啓太の言うとおり、私は病名を知った以上、

心配をしながら、どこかに同情も持つだろう。

守ってもらいたいという欲求より、優しくしなければと、無理をするかもしれない。



やっぱり……

もう、会うべきではなかったのだ。



近所の人なら、それで済むかもしれないけれど、

啓太だから、思い出してしまう。

脚を滑らせた時に支えてくれた腕と、近付いた顔。



愛されていたことを……

そして自分が愛していたことを、全て、思い出してしまう。



駅についてから、改めて携帯電話を開く。

悠に対して、仕事の予定が変わったからと、メールを送りなおした。





次の日、悠が言ってくれたように、お母さんから届いた手羽先を食べようと、

彼のマンションに向かった。それにあわせたおかすも数点つくり、

食卓をそれなりに整える。

手羽先は、大きめのケースに、綺麗に並べられていた。


「これ、お母さんの手作り?」

「違うよ。名古屋は手羽先が有名で、お店も色々とあるんだ。
僕が好きだというのを知っているから、送ってくれたのだと思う」


私はそうなんだと頷きながら、お皿に並べ、悠に言われたとおりレンジに入れる。

両手で持ち、皮のパリッとした食感を味わっていく。

これに合うと悠が選んでくれた日本酒は、飲んだ後の香りが、

ふっと鼻から抜ける、淡麗の辛口。


「ふぅ……」

「未央……」

「何?」

「顔が赤い」


悠は、私の頬を右の人差し指で軽く触れる。


「……そんな気がする。なんだかポッとしているし」


なんだろう、体調だろうか。

今日は酔いが回るのが速い気がする。


「未央……」

「ん?」

「かわいい……」


悠の言葉に、私はからかわれたと背中を軽く叩く。


「28の女に、そういうことを言わないの」

「どうして」

「どうしても……」


悠の言葉は、いつもストレートで、くすぐったくてしょうがなくなるから。

もちろん、当然、嬉しいけれど……



その日は、互いに酔っているとわかる状態のまま、

もっと楽しい時間を過ごそうと、肌を合わせていく。

指と舌先に、敏感に反応するのが楽しいのか、

悠はいつもよりも時間をかけて、ゆっくりと私に触れた。

私はそのさまようような時間が、どうにもじれったくなり、身体を少しずらす。


「未央……」


なんだろう。触れられるのは嫌いではないはずなのに、

とにかく、何も考えられないようにして欲しいと、願ってしまう。

ふわふわした気持ちではなく、ただ、求められていないと心配になる。



明日もまた、同じ日を迎えられるだろうかと……



「悠……」


私のすがるような声に気付き、悠はその思いを形にしてくれる。

高まっていく気持ちの中で、私は何度も『悠』の名前を呼び続ける。

何も考えられなくなるくらい、ただ愛して欲しいと……


私の居場所は、ここだと……心から思えるように。



21-②




コメント、拍手、ランクポチなど、みなさんの参加をお待ちしてます。 (。-_-)ノ☆・゚::゚ヨロシク♪

テーマ : 恋愛小説
ジャンル : 小説・文学

コメント

非公開コメント

プロフィール

momonta

Author:momonta
育てた怪獣2匹は、すっかりかわいさを無くしたため、今や『犬愛』に目覚めたお気楽主婦です。日々のちょっとしたこと、趣味で取り組んでいる『創作』を、このブログに書いていきたいと思っています。
飲み物片手に、立ち寄ってくださいね。

なお、作品の無断転載やお持ち帰りはご遠慮ください。著作権は放棄していません。お願いします。

発芽室、ただいま連載中!
あなただから、全てを知りたい……
カレンダー
10 | 2018/11 | 12
- - - - 1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 -
カテゴリ
リンク
FC2ブログランキング
小説・文学部門に参加しています。

FC2Blog Ranking

最新コメント
最新記事
いらっしゃいませ!
RSSリンクの表示
アクセスランキング
[ジャンルランキング]
小説・文学
270位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
ロマンス
4位
アクセスランキングを見る>>
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

月別アーカイブ
最新トラックバック