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22 あなたを救う 【カミカゼ】 ①

22 あなたを救う
22-①


眉村先生が引き受けてくれたこと、

そして絵柄として採用したい作品はどれなのか、それを簡潔に文章にする。


「そうでしたよね、作品名とキャラクター」

「そう。メガネ男子もいるし、少しひげを蓄えた人もいたはず。
ほら、3年くらい前のはロングだったでしょ、髪の毛」


眉村先生は、自分の髪にそう言いながら触れていく。


「あぁ……はい」

「今のだと、裸だけど」


『ただ……あなたが好き』

確かに、メインは裸かも。


「裸のキャラを選ぶことはないと思いますよ、ケーキを売るお店ですから。
お店のイメージが変わりますし」


眉村先生は冗談よと言いながら、両肩を動かしていく。

私は、先生の心の広さに感謝し、啓太からのメールを待った。



『キャラクターって?』

『作品名を聞けってこと?』

『大きさは……』



それから、啓太と何度かメールを送りあった。

それはもちろん、イラストのことだけだけれど、

ずっと、いがみ合っていた気がしていたので、前のように穏やかな時間が来たことに、

なんとなく安心する。



「未央……」

「ん?」

「何、さっきからニヤニヤしているの」


私は顔をあげる。


「ニヤニヤなんてしていません。色々と決まったことがあったから、
ちょっと安心しただけです」


8月も終わりに近づき、悠の『アルゼンチン行き』が目の前に迫った。

今日は駆け込みの『サマーフェア』

美味しいものをたくさんお皿に乗せて、味わわないと。


「で、決まったことって何?」


悠は、小皿に取った酢豚を食べながら、そう聞いてくる。


「知り合いの方に、眉村先生のイラストを頼まれたの。
お店を開くことになるから、そこに飾れるようなもの?」

「眉村先生……って、未央が担当している漫画家さん?」

「あ、前にね。今は別の……ほら、早川先生って言ったでしょう」

「あぁ、そうか、そうだったね」


悠が眉村先生を知らないのは、当然のことだろう。

ビジネス雑誌を常に探す悠の読むものとは、ジャンルがあまりにも違う。


「へぇ……お店かぁ」


悠は自分で店を構えて、何もかも責任を取っていくのは、

とても大変なことだと、今度は春巻きを食べ始める。

カリッという音が聞こえ、思わず悠の口元を見た。


「春巻き、どこにあった? 取ってくればよかった」

「五目焼きそばの横だよ。ほら、1本、あげる」


悠は自分のお皿から、一つ春巻きを分けてくれる。


「ありがとう……後で取ってくる」


バイキングは、好きなものを何度食べても怒られない。

マイペースに食べていけるのは、ただそれだけで楽しいもの。


「僕はサラリーマンが楽だな。こうして出張とか色々と言われるけれど、
でも、休みはしっかり取れるしね」


悠は、24時間仕事のことを考えないとならない生活は難しいと、

ジョッキのビールを飲んでいく。


「あ、そうだ……あのさ、一応母に言われたから、未央に話しておくけれど、
あまり気にしないで聞いてくれる?」

「何?」


悠は風水や方位学に興味を持つお母さんが、

私のことも気にして少し調べたらしいと、言い始めた。


「調べたって?」

「元々、風水にしても方位学にしても、自己流みたいなところがあって、
自分が都合のいい部分だけ活用しているような人だから、
あんまり受け入れなくてもいいのだけれど、秋に、実家に行ったとき、
『どうなの?』とか話しを振られたら、未央がきょとんとなるだろう。
だから、今、話しておこうと思って」

「うん……話して」


私はあまりこだわりがないので、とりあえずの話しなら聞いておこうと、

軽めに考える。


「未央の職場が、結構、古いビルなんだってね」

「ビル? あぁ、うん……そうかも。改築はしているけれど」


うちの出版社の建物が、東京の文化財に指定されるくらい、歴史があるというのは、

以前、酔っ払った編集長から聞いたことがある。


「それがさ……出版社と駅の方角はいいんだって。
でも、東はあまり方向がよくないらしくて」

「東? 出版社から東ってこと?」

「だと思う。だから、その方向にご贔屓の店とか、
安らぎの場所を作ると、僕達の間がギクシャクするとかなんだとか……
あぁ、もう、面倒だけど」


悠は、とにかく聞いてくれたらそれでいいよと、また料理を食べ進める。

私より圧倒的に早いスピードで食べてしまったため、悠はおかわりを求め、

席を離れていく。



出版社から東……

お義母さんは、悠と私にとって、あまりいい方向ではないらしいと……



考えすぎだろうか。

方角的には、啓太のマンションがあった。



悠のお母さんが啓太のことを知っているわけはないし、

東という漠然とした方角だけで、当てはめる私がおかしいのかもしれないが、

冷蔵庫のメモを見られたときのように、

どこか、見透かされているようで、少し怖くなる。


「ほら、未央。春巻き」

「あ……やだ、5本も」

「食べればいいんだよ、別に」


悠が戻ってきたので、今度は私が立ち上がる。

そう、あまり考えるのはやめよう。

悠も、お母さんのやり方は、あくまでも自己流でとそう言っていた。

私は再び食べたいものをお皿に乗せながら、時間を楽しんだ。



22-②




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テーマ : 恋愛小説
ジャンル : 小説・文学

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Author:momonta
育てた怪獣2匹は、すっかりかわいさを無くしたため、今や『犬愛』に目覚めたお気楽主婦です。日々のちょっとしたこと、趣味で取り組んでいる『創作』を、このブログに書いていきたいと思っています。
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なお、作品の無断転載やお持ち帰りはご遠慮ください。著作権は放棄していません。お願いします。

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