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22 あなたを救う 【カミカゼ】 ③

22-③


今回は、通りに面する窓側の席。


「あの……」

「はい」


私は『中谷未央です』と名前を名乗り、岡野啓太さんを呼んで欲しいとそう言った。

バイトの女性は、わかりましたと返事をした後、厨房に消える。

私の座ったのは、4人がけのテーブル席。

広くて、一人では申し訳ないくらいだけれど。



座った位置から見える、隣のテーブル席の男性。

なんだか……足を不規則に動かして、落ち着かないように見えた。

嫌だな……と瞬間的に思ってしまう。



テーブルにはいくつもグラスがあって、飲みかけも3つある。

雑誌や新聞があるわけではないので、何をしているのかよくわからないけれど、

さっきから視線が、あっちにこっちに動く。

時折、口が動いているのは、何か独り言でも言っているのだろうか。



見るのはやめよう。目でもあって、文句をつけられたら困るし……



視線を窓の外に向けていると、人影が入り込む。

私はすぐにそちらを向いた。


「ごめんな、色々と」



啓太……



「ううん……」


啓太は、手に持っていた『カフェオレ』のカップを置いてくれた。

私は『ありがとう』とそれを受け取る。


「なんだか、大きな話になってしまって、未央に迷惑をかけている気がするけど。
仕事に影響とか出ていないか」


啓太は座りながら、そう言ってくれる。


「迷惑はかかっていないわよ。
ただ、眉村先生は、確かに大サービスをしてくれたと思う」


私は、頼まれたものは年末まで仕上げるのが難しいので、

とりあえずご本人たちに渡して欲しいと頼まれた色紙を、啓太に渡す。


「これ、素敵だよ。これだけでもものすごい価値がある」

「うん」


啓太は袋を開くと、その色紙を見る。

こういったものを常に見ているわけではないだろうが、

そのよさはきっとわかるはず。


「確かに、すごいな……」

「うん……」


私は、啓太が色紙を袋にしまうのを待ち、お金のことを話した。

啓太はその金額で大丈夫なのかと聞き返したので、大丈夫だと頷いていく。


「未央の力だな」

「ううん……それは違う」

「違う?」


私は、眉村先生は、啓太が園田さんに作品を描き上げるきっかけを

与えてくれたことが嬉しかったのだと、正直に話した。

私と先生のつながりより、園田さんと先生の方が、数倍深く長いのだから。


「そっか……」


今は、9月。夏から秋へと動くとき。

ふと気がつくと、啓太と過ごしてきた日々より、

距離を置くようになってからの方が長くなっている。

感情的にならずに、今なら切り出せる気がして、私は口を開いた。


「園田さんと啓太が近付くのを知りながら、複雑な気持ちだったのよ、私」


啓太は無言のまま、私を見る。


「それでも……園田さんなら、
私のように啓太に負担をかけない付き合い方が出来るのかなとも、思ったりして」


家族だの子供だの、そういうことを言わない関係。

園田さんとなら築けるのではないかと、思ったこともあった。

『啓太なりの幸せ』を知ることが出来たらと、もがく日もあって。


「未央……」

「何?」

「本当に、もう俺のことは、気にしなくていいから」

「啓太……」

「毎日、ちゃんと生きているし、生活しているから。
未央らしいと言えばらしいけれど、いつまでも責任を感じるなって」


私への優しい言葉。

それにしても『ちゃんと生きている』って何よ。

もう少し言い方がないの?


「あのね……」

「ごめん、未央。ちょっと」


それまで和やかな雰囲気だったのに、

啓太はいきなり立ち上がると、お店の入り口から外へ出ていった。

何を思い出したのかと、私も啓太が進む方向を見ると、

今まで、私の前の席に座っていた男の人が、

いつの間にか外にいて、大きな声を出し、誰かと話しているのがわかる。



誰だろう……



ちょうど窓にかけるカーテンの部分に隠れてしまうので、少し手で動かしてみる。

啓太と男の人の前にいるのは、女の子だけれど……



その女の子の前に、啓太が割り込むように入っていく。

男の人のほうは、啓太をどかそうと文句を言っているように見えて、

だんだん、興奮してきているのではないだろうか。

あの人、啓太を足で蹴っている気がするんだけど……



何、どういうこと?



そんなごちゃついた時間が1分近くあり、次に聞こえてきたのは、

一緒にいた女の子の悲鳴。




悲鳴……




走っていく男の人。



そして……



啓太……



「啓太!」



啓太が崩れ落ちるようになるのを見た私は、店から慌てて飛び出した。



22-④




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テーマ : 恋愛小説
ジャンル : 小説・文学

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育てた怪獣2匹は、すっかりかわいさを無くしたため、今や『犬愛』に目覚めたお気楽主婦です。日々のちょっとしたこと、趣味で取り組んでいる『創作』を、このブログに書いていきたいと思っています。
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なお、作品の無断転載やお持ち帰りはご遠慮ください。著作権は放棄していません。お願いします。

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