FC2ブログ

24 燃える心 【ブラッディメアリー】 ⑤

24-⑤


「本当にそうなんだ、おめでとう」

「ありがとう。今日、お父さんたちには言うつもりだったの。
和貴に話しをしたつもりはなかったんだけど……」


千波ちゃんは、兄に抱かれながら眠っている和貴のことを見る。


「3歳くらいでも、何を話しているのかなと聞いているんだよ、きっと。
千波ちゃんやお兄ちゃんが嬉しそうにしていたら、勘が働いたのかも」

「そうかしら」


千波ちゃんは優しい笑顔で、そこにいる。

和貴の弟か妹が生まれる、『おめでた』という響きが、

私の気持ちを少し楽にしてくれた。


「お前はどうなんだよ」


兄からの質問。


「どうって?」

「もうすぐ29だろう、付き合っている男くらいいないのか」


私は頷くべきなのか、首を振るべきなのか、迷ってしまう。


「そういう押し付けるような言い方をするから、奏樹には話したくないと思うのよね、
未央ちゃん」


千波ちゃんは、デリカシーがないと、兄を軽く責める。


「デリカシーってなんだよ。俺は、兄としてだな」

「そういうのがおせっかいなのよ」


この旅行で、悠のことを話すつもりになっていたが、咄嗟に聞かれたとき、

言葉が出なかった。


「おせっかいって……おい、未央。お前に男の影がないから、
だから親父にあれこれ余計なことをされるんだぞ」


お見合いの心配、将来は親元へ戻れという身勝手なアドバイスなど、

確かに人生設計をしていないように見えるからこそ、言われるのだろうけれど。


「あぁ、もういい。楽しい旅行にお小言はやめて」


私はそういうと、両耳を塞いで見せる。


「そうそう、おせっかい、おせっかい」


千波ちゃんのフォローに、兄は呆れたという顔をした。





兄夫婦の報告により、父も母も上機嫌だった。

和貴は大きなお風呂に興奮し、バイキングの食事も、頑張って食べている。

私も久しぶりにゆっくりとお湯につかり、仕事の疲れを癒していく。

冷たいものが飲みたくなり、自動販売機を探しに出ると、

星空の綺麗に見える場所を見つけ、思わず立ち止まった。



『……ストレスも溜まるだろ、夜になると星空が綺麗なことが、唯一の救いだったね』



アルゼンチンから戻ってきた悠が、そんなことを言っていた。

確かに、こうして空を見ていると、気持ちが癒される気がしてくる。

今日の夜、悠のことを話すつもりだったけれど、千波ちゃんの報告があり、

その後、自分自身が切り出せなかった。

明日の朝……話すべきだろうけれど。


「未央ちゃん」


声の方へ振り返ると、千波ちゃんが立っていた。



私と同じように、冷たいものが飲みたいと言った兄のために、

千波ちゃんも自動販売機を探し、出てきたようだった。

たそがれている私に気付き、品物だけを兄に渡すと、ソファーの前に戻ってきてくれる。


「お兄ちゃん、文句言わなかった?」

「言わないわよ。未央ちゃんが悩みでもあるのなら、聞いてやってくれというのが、
いつも奏樹の言うことだし」


思春期ということもあり、中学生くらいの時は、

自分勝手に思えた兄が、どちらかというと『嫌い』だったのに、

こうして大人になり互いに距離を置いたからだろうか、

千波ちゃんというクッションがあるからだろうか、一番関係が良好だと思えてくる。


「悩みか……やっぱりバレバレだよね」


千波ちゃんと二人というシチュエーションが、私の気持ちを楽にしてくれた。

この人ならという気持ちが、ゴチャゴチャの思いを、まとめられる気がしてくる。


「実は、この旅行で、みんなに本当は話そうとしていたことがあるの」


私は、悠のことを話すつもりでいたことを、千波ちゃんに語った。

出会ったのは昨年だったが、今年の春、交際に発展し、真面目な人だけに、

将来も見えてくると思えたことも話す。

千波ちゃんは私に見えるように、大きく頷いた。


「旅行が終わって、10月になったら、向こうのご両親に会って欲しいと言われていて。
驚きもあったけれど、私も彼の気持ちに応えようと思っていたの……」


そう、そうするつもりだった。

悠のことだから、ご両親に会ってから、

私へ『プロポーズ』をするつもりになっているのだろうと、この先の展開が予想できる。


「うん……」


千波ちゃんは、『花菱物産』の人なら、お義父さんたちも文句はないでしょうと、

そう言ってくれた。


「うん……でも……」


そう、でも……なのだ。


「でも?」

「ここのところ、どんどん気持ちがおかしくなってきていて」

「おかしくなってきた?」


私は千波ちゃんの顔を見ながら、一度頷く。


「前に話したでしょう。未来を見ない相手と付き合っているって」

「あぁ……言っていたわよね」

「その人が、どうしてそんなふうに私に冷たかったのか、普通の『未来』を見ないのか、
その理由に気付いてしまったの」


『トラウマ』のこと。

私は啓太の事情も全て、千波ちゃんに語り続けた。

病気になり、将来に不安があること、

そして、『幸せな家族』というものを知らないだけに、治療を優先してしまったこと。

その決断で、自分自身にハンデを背負ってしまい、その荷物を負わせたくなくて、

人と深く関わりきれないことなど、別れと再会を繰り返した話しも、

全てその場の空気に乗せていく。


「彼を深く知って、その後ろにある優しさに気付いてから、気持ちがまとまらなくて」


千波ちゃんは、黙ったまま聞いてくれている。


「悠と付き合いを始めたのも、きちんと自分で選んだことだから、
このまままっすぐに進めばいいと思うのだけれど、でも……」



でも……

この言葉を出してしまう気持ちが、どんどん強くなっている。


「でも……なんだよね」


そう、でもなのだ。

私は千波ちゃんの言葉に、頷くしかなかった。



25-①

《プレラブ プチ知識 タイトル写真》

24 【ブラッディメアリー】

★カクテル言葉は『燃える心』

材料はウオッカ 45ml、トマトジュース 適量、塩 少量、タバスコ 少量
レモンスライス





コメント、拍手、ランクポチなど、みなさんの参加をお待ちしてます。 (。-_-)ノ☆・゚::゚ヨロシク♪

テーマ : 恋愛小説
ジャンル : 小説・文学

コメント

非公開コメント

プロフィール

momonta

Author:momonta
育てた怪獣2匹は、すっかりかわいさを無くしたため、今や『犬愛』に目覚めたお気楽主婦です。日々のちょっとしたこと、趣味で取り組んでいる『創作』を、このブログに書いていきたいと思っています。
飲み物片手に、立ち寄ってくださいね。

なお、作品の無断転載やお持ち帰りはご遠慮ください。著作権は放棄していません。お願いします。

発芽室、ただいま連載中!
あなただから、全てを知りたい……
カレンダー
10 | 2018/11 | 12
- - - - 1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 -
カテゴリ
リンク
FC2ブログランキング
小説・文学部門に参加しています。

FC2Blog Ranking

最新コメント
最新記事
いらっしゃいませ!
RSSリンクの表示
アクセスランキング
[ジャンルランキング]
小説・文学
270位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
ロマンス
4位
アクセスランキングを見る>>
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

月別アーカイブ
最新トラックバック