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25 あなたを信じて 【ウォッカ・アイスバーグ】 ①

25 あなたを信じて
25-①


「こうだからこうしようという思いに、『でも……』が勝っているのなら、
未央ちゃんが望むのなら、それでいいと思う」

「千波ちゃん……」

「『でも……』なのでしょう。まぁ、『花菱物産』の方ではなくと説明したら、
奏樹……絶対に違うと言いそうだけれど」


千波ちゃんはそういうと、軽く舌を出す。


「こうだから、こうなるべきと考えていたら、自分自身が苦しくなるよね。
『でも』という言葉が、これだけはっきり出てくるのだもの、
本当の未央ちゃんの気持ちは、固まっているはず」


千波ちゃんは、そういうと、私の膝をポンと叩く。


「安定した生活も、平凡な毎日も、目の前に届く場所にあるのに、
それでも、元彼を支えたいと思うのなら、それでいい気がするよ。
ううん……そこまで『愛していたい』と思う人を無理に切り捨てても、
きっと、後悔し続ける気がする」


他人から見たらでこぼこ道でも、急な坂道でも、

見えない先に何があるのかは、行ってみなければわからない。

千波ちゃんは、私をそう励ましてくれる。


「広い道だなと思って歩いていたら、急に崖ってことだって、あるかもしれないしね」


未央ちゃんの行き方を、応援するからと千波ちゃんは『OK』マークを出す。


「今の彼が真面目な人だけに、自分自身の気持ちの変化が、未央ちゃんにとっては、
許せないと思っているのでしょうけれど……。あ、ほら、あるじゃない。
なんだっけ、流行したお笑いのネタ、男の人2人が横にいて、真ん中が女性で、
世の中には男性がなんだっけ……」


千波ちゃんのしどろもどろの説明だけれど、

誰のことなのかすぐにわかった。


「『35億』って……あれ?」

「あ、そうそう。35億。世の中には男の人が35億ってことでしょう。
女性もそれなりにいるのだから、未央ちゃんと別れても、素敵な人なら、
すぐに見つかるわよ、次の相手」


千波ちゃんは、椅子に座ったまま、『35億』のネタを真似し始める。

私はなんだかおかしくて、とにかく笑ってしまった。

久しぶりかもしれない、こんなふうに素直に笑うのは。



心から共感してもらえたのかどうか、それはわからない。

でも、『私が望んでいる』ことを、千波ちゃんはわかって、答えを返してくれた。

前へ進めばいいと、そういう気持ちにさせてくれた。


「違った意味で、両方の人に思いはあっても、未央ちゃん自身は一人なのだから。
傷つけてしまう人のためにも、選んだ道を後悔しないように、しっかりと進まないと」


『傷つけてしまう人』そう、その通りだった。

私は、しっかりと頷き返す。


「ありがとう、千波ちゃん」

「ん? いえいえ、私こそ、未央ちゃんがこうして話しをしてくれるのが、
とっても嬉しいのよ」


千波ちゃんは、姉貴分なのだと、また胸を張る。

私も同じように、胸を張って見せた。





『金沢旅行』から戻ると、私はテーブルの上に、『あの箱』を置いた。

啓太に手紙を書き、自分のしたことを謝罪し、返そうと思っていたものだけれど、

千波ちゃんに話しをして、乱れていた気持ちがまとまった。

いや、実際には千波ちゃんに言われた通りなのだ。

私自身の気持ちは、本当はもう固まっていた。

決断が出来なかったのは、背中をポンと押してくれる人が、欲しかったから。

お笑いのネタに絡め、笑わせてもらったとき、それがハッキリとわかった。


私はリボンを丁寧に取り、そして包装紙を取っていく。

中から出てきたのは、細長いケースだけれど、造りから貴金属であることがわかる。

右手で蓋を開け、その存在を確かめる。

私は入っていたものをつかむと、鏡のある場所に向かい、手を首に回した。



『シルバーのネックレス』



啓太が28歳になる私に、用意してくれていたのはシンプルなネックレスだった。

宝石も特についているわけではないし、派手な装飾があれこれついているわけでもない。

それでも、それが啓太らしいと思えるもの。


私は、外れないようにしっかりつけると、あらためて自分の姿を確認した。





次の日、『コレック』に啓太の出社を確認すると、まだ休暇中だということがわかった。

そのため、仕事を終えてから、マンションに向かうことにする。

あらためて行くことを確認したりすると、逆に拒絶される可能性もあるため、

あえて何も言わずに、立ち寄ることにした。

インターフォンを鳴らし、啓太の声を待つ。


『はい』

「こんばんは、未央です」


啓太は驚いているのか、すぐに返事が来なかった。

数秒後に、『どうしたのか』と聞き返される。


「話しがあるの」


その投げかけた言葉に戻ってきたのは、

今までと同じ、『こんなことはしない方がいい』という拒否のセリフだった。

しかし、以前のように挑発的な言葉は、ぶつけられない。

啓太もきっと、谷さんが自分の過去を私に話してしまったことを、聞いているのだろう。


「私にはあるの。だったら、ずっとここで待つから」


私はもう、後戻りは出来ない。

気持ちを決めて、ここへ乗り込む覚悟を決めたから、

箱をあけ、自分の首に、ネックレスをつけた。

その行為に勇気がもらえるよう、あらためて指で触れる。


『谷さんが話したことなら……』

「インターフォン越しではなく、話して」


こんなところで言い合いをするつもりはない。

私は、怪我をした啓太を救急車に乗せたのだからと、そう言った。

繕いだけを重ねたような会話をしても、仕方がない。


「開けてもらえないのなら、動かないから」


私がどういう性格なのか、啓太ならわかっているはず。

声と言葉に、真剣さを乗せた。

それから数秒後、扉が開かれる。

私はそのまま中へと進み、エレベーターの『3』のボタンを押した。

目指す部屋は『303』号室。

扉の前に立つと、インターフォンを押す。

さすがにここで拒絶されることはなく、啓太はドアを開け姿を見せた。


「未央、何度も話をした通りだ。こんなことは……」

「とにかく入ります」


立ちながらとか、勢いで語ることではない。

私は部屋の中に入り、ソファーと向かい合う位置に座る。

啓太は、大きく息を吐き、そしてソファーに座った。



25-②




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テーマ : 恋愛小説
ジャンル : 小説・文学

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育てた怪獣2匹は、すっかりかわいさを無くしたため、今や『犬愛』に目覚めたお気楽主婦です。日々のちょっとしたこと、趣味で取り組んでいる『創作』を、このブログに書いていきたいと思っています。
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