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25 あなたを信じて 【ウォッカ・アイスバーグ】 ③

25-③


部屋に戻り、携帯電話を取り出し、悠に連絡を入れる。

仕事は相変わらず忙しそうで、ゆっくり会えるのは5日後だと言われた。

私がわかったというと、そのまま会話は終わる。

携帯をテーブルに置き、大きく息を吐いた。



啓太に決意を告げた次の日、私の携帯に、谷さんから連絡が入った。

仕事場の近くまで行くのでと言われ、駅前の喫茶店で会うことになる。


「こんにちは」

「すみません、忙しいところを」

「いえ……」


谷さんが何をしに来たのか、聞かなくてもわかる気がした。

私の決意を知った啓太が、きっと、頼んだのだろう。


「啓太のことですよね」

「……はい」


谷さんは、啓太から連絡をもらい、今日は私に会いに来たとそう言った。

私は当然だと思い、しっかり頷き返す。


「あいつ、今日は本社の人間と、警察の事情聴取を受けなければならなくて。
そのあと、最終検査を兼ねて、また2日入院するんです」

「入院ですか」

「まぁ、検査がいろいろあるので行く病院ですから。
ケガの状態が悪いわけではないですし」


谷さんからの情報に、私はとりあえずそうですかと息を吐く。


「僕が中谷さんに、岡野のことをあれこれ話してしまったために、
こんな状態になってしまったと、戸惑っています」


谷さんは、申し訳ないという顔をする。


「いえ……気持ちを決めたのは、私です。確かに、谷さんから啓太のことを聞いて、
知らないことばかりだったので、驚きました。
でも、それで決めたのではありません。ずっと感じていたこともあったし、
むしろ、あのお話しを聞かせてもらったことで、今までわからなくて、
納得できなかった部分が、全て納得できました」


そう、啓太がどうして私を遠ざけたのか、

これからどんなふうに生きるつもりなのか、

決意も、その反面の寂しさも、辛さも、全て見えた。


「もやもやとした心の中に、1本の道が出来たと思っています」

「……道」

「はい。昨年の秋、私が『未来を見たい』と迫ったことで、
啓太は別れようと言いました。その時には、啓太自身が私のような考え方を納得できずに、
もっと条件のいい別の相手を探すつもりなのだと、そう思っていました。
私は、後からこじれたことを後悔し、啓太に連絡を取りましたが、
今思えば、彼は必死に私を突き放そうとするばかりで……」


香澄ちゃんのこと、園田さんのこと、

啓太は最低の男を、必死に演じていた。


「それならば、啓太が私を嫌ったのなら仕方がない。
いや、愛されていなかったのなら仕方がないと思って、
私も歩き出す気持ちになりましたが、啓太のまわりにいた人たちから、
それが違っていると聞かされるたびに、頭は混乱して……」


自分を受け入れてくれなかったと嘆いた香澄ちゃんと、園田さん。


「その混乱が、谷さんとの話しで、全て納得がいったんです」



啓太は、私を嫌っていたわけではなかったということ。



私は、首にかけたネックレスに触れる。


「実はこれ、病院の荷物を作りに行った時、啓太の押入れの中から見つけました。
去年の私の誕生日に、プレゼントするつもりで、買ってあったみたいです」


どこまで続くかわからないけれど、続けていたいと思っていたからこそ、

買ってくれてあったもの。


「勝手に持ってきてはいけないと思いながらも、手離すことが出来ませんでした」


戸惑いよりも嬉しさの方が勝っていた。

私を見てくれていたという嬉しさが、どんな感情よりも上にあった。


「啓太は、私と別れた後、他の人を探すことなどなく、
これからもずっと、一人で生きていくつもりなのだとわかって。
それは絶対に嫌だなと、自分の気持ちが決まりました」


人は、永遠に生き続けられない。

それならば、誰よりも自分がそばにいたい。


「私は、啓太のそばにいたいんです。私の人生には、啓太が必要です」


苦しいときは一緒に支えあっていたい。

同情とか、哀れみではなく、『そばにいる』という現実を、自分自身感じたい。


「中谷さん……」


最初は固かった谷さんの顔が、少し柔らかくなる。


「岡野からは、将来のこともあるし、結局、中谷さんが辛くなるから、
元に戻ることは考えないように言ってほしいと伝言されましたが……
僕は、今お話を聞いて、正直、嬉しいです」


谷さんは、啓太をひとりにするのが辛いのでと、そう言ってくれる。


「あいつは、『人を好きになる』エネルギーの使い道を、
よくわかっていないんです」


谷さんの言葉に、私は頷き返す。


「岡野が今、やらなければならないのは、あなたを遠ざけることではなくて、
病気としっかり向かい合うことだと……僕からも話しておきます」


谷さんは、そういうと、任せてくださいと軽く胸を張ってくれる。


「ありがとうございます。啓太は素直じゃないですから、
なんだかんだと文句を言うでしょうが、私も負けませんから」


そう、今までだって、色々なことを言われてきた。

それでも、心の奥底に、優しい部分があるから、私は啓太が好きなのだから。


「ただ……」


ただ……

この言葉の響きに、少し不安が増す。


「中谷さんのお相手の方の気持ちを思うと、僕もつらいところはありまして」


谷さんは、何もできずにと申し訳なさそうな顔をする。


「いえ……全て覚悟の上です。それでも、気持ちは決まっています」


千波ちゃんが言っていた通り、私自身はひとりしかいない。

どちらかしか愛し続けられないのなら、相手は啓太だと、そう決めた。


「私の行動で、啓太がしっかり自分と向き合ってくれると、信じます」


私の決意に、谷さんはあらためて頷いてくれる。

そのあとは、眉村先生のファンだという奥さんの話をしばらく聞いた。



25-④




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テーマ : 恋愛小説
ジャンル : 小説・文学

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育てた怪獣2匹は、すっかりかわいさを無くしたため、今や『犬愛』に目覚めたお気楽主婦です。日々のちょっとしたこと、趣味で取り組んでいる『創作』を、このブログに書いていきたいと思っています。
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なお、作品の無断転載やお持ち帰りはご遠慮ください。著作権は放棄していません。お願いします。

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