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26 決心 【ギブソン】 ⑤

26-⑤


園田さんから編集部の私宛に届いた手紙。

中には、かわいらしいイラストつきで、園田さんの今が、書かれてあった。



『中谷さん、お元気ですか……』



漫画の世界から離れた園田さんは、お父さんの介護をしながら、職探しをしていて、

そこである出会いをしたという。



『スマイルクック』



その団体は、普段は会社の持つ土地で農業を行っているが、

それプラスで、それぞれが自分の得意分野をいかし、活動をしているというものだった。

『レストラン』と『介護施設』と『保育園』。

都内にはそれぞれ数箇所あり、この法人が経営している場所には、

全てこの農園で作った野菜を下ろしている。

現役当時、電気工事をしていた男性は、店のメンテナンスと、

子供たちのおもちゃを格安に直す仕事をし、

おもちゃも治しても不要だと言われたものは、養護施設に持っていったりする。

また、ある女性は昔ピアノを習っていたので、それを生かし、

介護施設でお年寄りたちと歌を歌ったり、保育園にいる子供たち向けに、

簡単なコンサートを開いていた。

そして、園田さんは……


「似顔絵……」

「エ? 何か言いましたか?」


二宮さんの声に、私は手で少し待ってと合図をした。

園田さんは、絵を描ける強みを生かし、介護施設や保育園で絵を描いているという。


『しわだらけだけれど、みなさんかわいい顔をしているの。
だから、少しだけ……いや、結構、めいっぱい加工して、
昼間は『似顔絵』を描いてあげています』



そうか、『似顔絵』か。

昔、幼い頃、私も兄と一緒に似顔絵を描いてもらったことがある。

両親に連れられて行った、『東京タワー』。

あの絵、結構大人になるまで、居間に飾られていた記憶があって。



『子供の笑顔も、それぞれでかわいいですよ』



直営のレストランを予約すると、園田さんが家族の写真を預かり、

似顔絵をプレゼントする企画まで、すでにスタートしていた。

みなさん、農業という外活動と、自分の特技をプラスした毎日に、

生きがいを見つけていることも、書いてある。


「そんなに真剣に読む手紙ですか? 中谷さん」


自分の相談に、私が乗っていると思っていた二宮さんが、机から顔をあげた。


「ごめんね二宮さん。もう少し待って。
でも、もしかしたらすごくいいアシストになるかもしれないの」


私は携帯を取り出すと、すぐに眉村先生へ連絡を入れた。



『そうなのよ……』



電話に出てくれた眉村先生も、園田さんの今をもちろん知っていた。

園田さんのお父さんは、この秋から今までの施設ではない場所に通うことがあり、

そこで『スマイルクック』の活動を知ったのだと言う。

商業雑誌でも、挿絵でもなく、お年寄りや子供に描く似顔絵。

あれだけの作品を描けた園田さんがと思うと、不思議な思いはあるままだが、

逆にその今を、さらに知ってみたくなる。



『お年寄りって、子供に戻ったようになっているから、
『自分のために』という行為に、本当に嬉しそうな顔をしたり、
楽しそうに絵をもらってくれるって、園田さんも嬉しそうだったのよ』



眉村先生は、売り上げを競ったり、読者や編集者の反応を見る世界から外れて、

ただ描くことの楽しさだけを追っているのかもしれないと、話してくれる。



『ある意味、彼女らしいのかなと……』



私は、園田さんの手紙と、眉村先生の言葉に、大きく想像を膨らませ受話器を置いた。





「本当に、あの園田さんがこんな活動を……」


眉村先生に電話をしている間に、私は手紙を二宮さんに渡したため、

彼女も、『まさか』という思いがあったからか、読んだあと、

驚いたと小さくつぶやいていく。

そう、長い間、業界の中で仕事をしていた人であることを知っているから、

当然、そう思ってしまう。


「ねぇ、二宮さん。例の企画。編集長に園田さんを推してみたら?」

「エ……」

「決してビジネスとして成功したとか、何かを極めたという話しではないけれど、
毎日、やりたいこともないとか、グズグズしている人には、
いい刺激になる気がするけれど」


新人賞を取れるくらいの実力がある人だからこそ、そういった名声と無縁の世界に、

身を投じた意味が、明らかになるのではないだろうか。


「はい、そうしてみます」


二宮さんは、私あての手紙を一緒に持つと、そのまま編集長に声をかけていた。





啓太と3人で会おうと連絡を取ってから、4日後、悠からの返信があった。

指定された場所は、とあるホテルの部屋になる。

お店の中では、話しがしにくいということだろう。



『彼と二人で話しをさせて欲しい』



悠からの文面には、その言葉が入っていた。



27-①

《プレラブ プチ知識 タイトル写真》

26 【ギブソン】

★カクテル言葉は『決心』

材料はドライジン 5/6、ドライべルモット 1/6 パールオニオン





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テーマ : 恋愛小説
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育てた怪獣2匹は、すっかりかわいさを無くしたため、今や『犬愛』に目覚めたお気楽主婦です。日々のちょっとしたこと、趣味で取り組んでいる『創作』を、このブログに書いていきたいと思っています。
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