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27 時の流れ 【アキダクト】 ①

27 時の流れ
27-①


私は仕事の帰りに、啓太のマンションへ向かった。

悠からの返信を啓太に見せると、納得したように数回頷いている。


「わかった。そうしよう」

「でも……」

「その方が、互いに遠慮なくものが言える。確かに俺もそう思うし」


啓太は、私が入れば、悠は最初から『2対1』の構図を作られるわけで、

それはフェアではないと言い、病院の診療記録など、机の上に出していく。

『2対1』

確かに、そうかもしれないが。


「啓太……それ」

「うん。この前、病院に行った日、
今の状態を、先生に記入してもらえるように頼んであったから、
今日、取ってきたんだ。まぁ、会社に出すと一応は言ったけどね」


ウソはどこにもないことを証明するため、啓太はまた一つ勇気を出してくれた。

私は、その封筒を見る。


「寝込んでも行かない嫌いな病院に、また行ったんだ」

「あぁ……息苦しくてたまらなかったけれど」


啓太はそういうと、私の頭にポンを手を乗せる。


「これくらいのこと、最低でもしないと。俺のしていることは、
本当に、彼にとって申し訳ないことだ。一度は未央と別れておいて。
気持ちが変わりましたなんてさ……。だからこそ、彼に少しでも思いが伝わったらなと」


『俺の……』と、啓太はあくまでも自分の責任だと、そう言った。

もちろんそんなことはない。啓太ではなく、悠と未来に向かえると歩みだしたのは私。

そしてまた、啓太のところに戻りたいと言ったのも私なのだから。


「ありがとう……」


それでも今は、啓太の言葉に頷くしかなくて。



『2対1』



勝負の見えている場所に、来てくれようとしている悠の気持ちを思うと、

本当に申し訳ないと思う。



だからこそ、私はしっかり前を向かなければ……

私は啓太のくれたネックレスに触れる。

啓太と私。心は今まで以上に深くつながっているけれど、

今はまだ、その壁を乗り越えることは出来ない。

私は啓太とソファーに並んで座りながら、時計の針が進む音だけを聞いていた。





その日、早川先生の原稿を取りに行った私は、

二人が話し合いの場所にしたホテルに、時間より少し早めに到着した。

ロビーの喫茶室に座っていると、先に入ってきたのは悠だった。

すぐに立ち上がった私に気付き、足をこちらに向けてくれる。


「悠……忙しいのに、ごめんなさい」


悠は声に出さないまま、『いいよ』という意味なのか首を振った。

左手につけている時計を見る。


「彼は……」

「まだ来ていないと思う」

「そう……」


悠はそのまま私の前から離れ、ロビーに向かい、何やら鍵を受け取っていた。

私は、その様子をただ見ているだけになる。

悠の顔、この間より穏やかな気はするけれど、でも……

鍵を受け取った悠は、私のところに戻ることはなく、

そのままエレベーターの方へ行ってしまった。

悠の姿が見えなくなり、私はまた椅子に座る。

そして、悠がホテルの部屋に向かってから、5分もしないうちに、啓太が入ってきた。


「啓太」

「あ……うん」


私は、悠の方が先に来たと告げる。

すると啓太は『わかった』と頷き、そのままロビーへ向かった。

部屋の番号を聞いているのだろう。

そのままエレベーターの方へ歩いていく。



そして、二人は私の前からいなくなった。

これからどれくらいかかるのかわからない時間、私は一人、ここで待つしか出来ない。

どちらにも『ごめんなさい』という気持ちを持ったまま、

ただ、座っていることしか……。





外の景色が夜を深くすることで、ホテルの中の光りはより一層眩しく思える。

この喫茶室に入ったとき隣にいた人も、前にいた人も、すでに席を立った。

飲んでいた『カフェオレ』も、ずいぶん冷たくなって……



二人が部屋に向かってから、どれくらい経っただろう。

エレベーターが開くたびに顔を向けるものの、啓太も悠も姿を見せない。



あと1回、降りてこなかったら、

ロビーで部屋の番号を聞いてみようと思っていたとき、

到着したエレベーターから、啓太が降りてきた。

私はすぐに駆け寄っていく。


「啓太……」


啓太は頷くと、『上村さんは来たか』とそう聞いた。


「来ていない……。私、ずっと見ていたけれど、降りてこなかった」

「エ……」


啓太は悠の方が10分近く先に出たと、そう教えてくれる。


「未央と話したいから、10分位したら出てきてくれと言われて、
俺は後からわざと……」


私は『来ていない』と首を振る。


「それじゃ……」


私たちは、ロビーの上にある2階の廊下を見た。

このホテルには、2階からの出口もあるからだ。

大きな歩道橋とつながっている造り。

私は、そのまま走り出す。



そうだ、悠はきっと、啓太との話しを終えて、この2階から出て行ったのだろう。

1階の喫茶室に座っている私の姿を、上から少しだけ見たかもしれない。

言いたいことは山ほどあるだろうし、腹だたしい思いもあるはずなのに、

言葉を出せば、責め立ててしまうかもしれないと思い、何も言わずに……



悠らしい……でも、嫌だ。

そんなことは嫌。

私は、悠に謝らないとならないのに。

だから、ここにずっと、座っていたのだから。



27-②




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テーマ : 恋愛小説
ジャンル : 小説・文学

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育てた怪獣2匹は、すっかりかわいさを無くしたため、今や『犬愛』に目覚めたお気楽主婦です。日々のちょっとしたこと、趣味で取り組んでいる『創作』を、このブログに書いていきたいと思っています。
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なお、作品の無断転載やお持ち帰りはご遠慮ください。著作権は放棄していません。お願いします。

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