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ももんたの発芽室

ももんたのつぶやきや、つたないですが、創作を掲載しています。
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28 心を穏やかに 【ウイスキー・マック】 ①

28 心を穏やかに

28-①


『今日は……泊まる?』


啓太に尋ねられて、私の鼓動は一気に速まった。

求められていることを、心から感じられた。その満足感を味わっていく。

お鍋に入れようとしたご飯もたまごも、どうでもよくなってしまった。


「未央……」


啓太の声に、私は両足を少しあげ、つま先で顔を支える。

その分膝の上にある啓太の顔に、自分を近づけようとしたのに、

身体が固いからなのか、唇が触れない。

顔を上に向けた啓太が笑っている。


「笑わないでよ」

「ごめん」


啓太が身体を起こし、あらためて唇に触れる。

触れてしまうと、覚えていた心も身体も、もっと長い時間を共有したくなる。

私たちは、視線を合わせ、一緒に食卓の前を離れた。

食事なら、これからだってもっと色々と作ることが出来る。

だから今は、ただ……

『愛し合っている』ということを、互いに深く感じていたい。

1年前に戻ると宣言したときにも、思いがあふれて唇を重ねたけれど、

もっと深く求め合うのは、不謹慎な気がして出来なかった。

今こうして、本当の意味で元に戻っていく。

なんだろう……

私を見る啓太の視線が、あまりにもまっすぐに見えて怖いくらいになる。

もう全て知っているはずだし、知られているはずなのに、

じっと見つめられていることが、恥ずかしくてたまらない。


「啓太……」

「何?」

「あんまり見ないで」

「どうして」

「だって……」


私の身体がベッドの上になり、啓太はその上から視線を落とす。

身を包んでいたものがはがされていくたびに、また視線を感じ、

自分の身体の温度が、どんどん上がっていく。

下着が外れ、啓太の舌先が私の肌に触れた。

もうそれだけで、つま先にまで全て電気が走る気がしてしまう。

どこかで切っていた回路が一気につながり、そして熱を帯びていく。

丁寧に、そしてその感覚を確かめていくように、啓太の指が身体を落ちていく。

その優しい刺激に身勝手に出て行く声、ふっと指が離れる瞬間、

そんな行動に心を乱され、すがるように私は啓太の名前を呼んでしまう。

この後訪れる感覚を思い出した互いの身体が、じれったさに終止符をうとうと、

ひとつになる瞬間を心待ちにする。

声が届いているはずなのに、あいつは聞かないふりをしているのか、

私の戸惑いと声の震えを楽しんでいる気がして、さらに強く名前を呼んだ。


「啓太……ねぇ……」


私は両手を伸ばす。

これからはずっと、ずっと、あなたを愛し続けるのだと、

そばにきてくれた顔に触れ、そしてもう一度ゆっくりと唇を重ねていく。

唇の絆に負けないよう、二人の身体も一つになった。



愛されていることを感じ、一つの不安もなく求め合えるということが、

これほど幸せなものなのだと強く感じながら、私はその夜を受け入れた。



そして、真夜中と言える時間、余韻の中で私は目が覚めた。

横には啓太がいる。

啓太とは、『ブルーストーン』で偶然に出会い、その後、酔ったままホテルに向かい、

勢いで身体を重ねていたけれど、そのとき、言葉にするほど悪いことには思えず、

その心地よさに、関係を続けることにした。


あれからどれくらい経ったのだろう。

しばらく離れていたからなのか、あの日を思い出した。



『セックスフレンド』



そう割り切って会うことを重ねていた日々ではなく、

これからは『パートナー』として、向かい合っていく。



啓太の右肩の傷。



そう、あの日、『コレック』の並木通り店で、

何事もなく眉村先生のイラストを渡していたら、

谷さんから啓太の昔のことなど聞くことはなかっただろう。

そして、啓太の部屋に再び向かい、『1年前のネックレス』に会うこともなかった。

人の出会いには偶然が当然あるけれど、そこに重なっていくものの流れで、

運命は出来上がっているのだろうか。

思わず、その傷跡に手を伸ばす。


「未央……」

「ごめん、痛い?」

「痛くはないよ。ちょっとくすぐったい」


啓太は私が『そわっ』と触れたのでと笑い出す。


「あ、ごめん」


私は、確かに妙な触れ方だったと、謝ることにする。


「もう大丈夫だから」


私は啓太の言葉に頷くと、落ち着く場所を探し、もう一度目を閉じた。





カレンダーは11月を迎えていた。

二宮さんが手がけた園田さんの記事は好評で、過去のものになったはずの作品にも、

再びスポットライトが当たった。

紙の書籍とは違い、電子書籍は思い出したらすぐに手に取れる。

私たち編集部にとっても、これは嬉しい誤算だった。


「はい、これ、切符」

「……うん」


私たちは互いに有給を取り、『初めての旅行』をすることにした。

場所は定番中の定番、『箱根』だけれど、そんなことはどうでもよかった。

啓太は私が渡した『ロマンスカー』の指定席切符を見ながら、

いまいちな表情を見せている。


「何? 何かご不満でも」

「不満というより……」

「行くのが面倒とか、どうせ行っても、こんなことだとかそういうの無しだからね。
啓太だって言っていたでしょう、未央と旅行でもって」

「あぁ、はいはい、わかっているって。そうガンガン言うな」


私たちはもう『それだけの関係』ではなくなったのだ。

思い出もたくさん作って、毎日を楽しく生きる権利を得た。


「実はさ、こんな手紙が来てね」

「手紙?」


啓太は頷くと、白い封筒を私の前に出した。



28-②




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Author:momonta
育てた怪獣2匹は、すっかりかわいさを無くしたため、今や『犬愛』に目覚めたお気楽主婦です。日々のちょっとしたこと、趣味で取り組んでいる『創作』を、このブログに書いていきたいと思っています。
飲み物片手に、立ち寄ってくださいね。

なお、作品の無断転載やお持ち帰りはご遠慮ください。著作権は放棄していません。お願いします。

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