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29 感化 【ブラッディ・ブル】 ③

29-③


「いただきます」


買って来たスープにお湯を入れて、吹きながら飲む。

暖房がきいてきたので、そこまで体を小さくしなくてもよくなった。

テレビのリモコンを持ち、とりあえずつけてみる。

芸能人が色々並んでいるけれど、なんだろう、これ。クイズ大会だろうか。

3番目まではわかるけれど、4番目がわからない。


「あれ……」


いや、どこかであの漢字見たような気がするけれど……

どこだったかな。


最初はソファーに座って見ていた番組も、食事を終えたからなのか、

クッションを抱えてみるようになっていく。

自分自身は、解答者と一緒に問題をこなしている気持ちになっていたけれど、

ふと気付くとコマーシャルの時もあり、時々、転寝状態になっていた。

そのままクッションを頭の下にする。

ソファーで横になりながら、正解率の高い漫才師の得意げな顔を見ているうちに、

そこからの記憶は……



誰かの手……



誰?


「誰!」


眠りの中から、妙な感覚に目覚めてみると、

そこにはどうみてもお酒を飲んできた啓太が、座っていた。


「未央……」

「うわぁ……」

「なんだよ、それ」

「だって……」


ソファーで寝ている私に覆いかぶさろうとする啓太を何とかはがし、場所を譲る。


「結構、顔赤いけれど、相当飲んだの?」

「いえいえ、それほどでも」


何がそれほどよ。そんな赤い顔して……。これは相当飲んでいるな。

そうでなければ、こんな表情にはならない。


「もう……ほら、啓太」


スーツがしわくちゃになるからと言いながら、私は啓太の上着を脱がせていく。

ベルトを外して、ズボンも取らないと。


「未央……大胆に襲うんだな」

「バカなことを言わないで。ほら……立ってよ」


『体のやたらにしっかりした子供』の相手をするのは、大変だった。

なんとか服をハンガーにかけて、室内用の服を出してあげる。


「いいよ、どうせすぐ脱いじゃうだろうし」

「もう……」


いくら暖房がきいているといっても、裸でいいわけがない。

私は啓太の脚にズボンを通し、上半身を起こすと、上着を着せた。


「ベッドで寝た方がいいでしょう」

「風呂は……」

「それだけ酔っているのに、入るのはダメ」


私も疲れて眠たかったはずなのに、転寝のおかげなのか、

それとも手のかかる啓太のおかげなのか、すっかり目覚めてしまう。

なんとかベッドへ運ぼうとしたが、そこは諦め、そのまま毛布をかけることにした。

しばらく眠っていたら、きっと目覚めるだろう。

私がこれ以上動かさないと思ったのか、啓太の目がソファーに寝ている状態のまま、

閉じてしまう。


「全く……」


怒っているのは表面だけ。

こんなふうに、頼ってもらっていることが、今の私は嬉しくて仕方がない。

啓太にとって、だらけていられる関係になれたのだと思うと、

このまま、目の前にある唇に、キスをしたくなるけれど……

私はしばらくニュースを見た後、お風呂に入ることにする。

出てきた後、ソファーを見ると、啓太の姿がなかった。

部屋の扉……


「あら……」


啓太はちゃんと、ベッドに寝ている。

あれだけ動けないと人に迷惑をかけたくせに。

私は髪の毛を乾かして、ここにおいてあるパジャマに着替えた。

ゆっくりと布団を上げて中に入っていく。


「わざわざ着ることないのに」


少し酔いのさめた啓太の声。


「動けないほど酔っていたんじゃないの?」


そう言いながら、軽く唇に触れる。


「さすがに風呂に入るパワーはなかったけどね、ここで充電した」


啓太の呆れたセリフに笑いながら、私は首に腕を回していく。

啓太の手が、私の胸元に向かい、ボタンが一つずつ外されていく。

解き放たれた互いの思いを伝え合おうと、あらためて唇を寄せた。





「12月の29日」

『うん……ちょっと年末で申し訳ないけれどって』

「そんなこと」


確かに年末だけれど、そんなことは言っていられない。

私たちは、啓太のお世話になった先輩、谷さんご夫婦と会うことになった。

谷さんは、有給の消化もあり、すでに『コレック』を退社したという。


『この前の忘年会には来てくれたんだ。もう、引っ越しの準備も進んでいるらしくて』

「大変ね」

『業者も忙しいから、引っ越しは年明けになった。
でも、お店の工事は順調に進んでいるって、この間写真も見せてもらったよ』


ケーキ作りの得意な奥さんと一緒に、お店を開くことにした谷さん。

眉村先生にお願いしたイラストも、2月には完成するはず。


「わかった。その日は空けておくから」


私は啓太からの電話を切り、携帯をテーブルに置く。

仕事で疲れた体を、少しでも楽にしようと首を軽く回した。

カレンダーを見る。29日まではあと数日。

このまま年の瀬を迎えて、新しい年になって……



そう考えているのに、気持ちがまとまらない。



そう、私は少し体調がおかしい。

こなければならないものが、来ていないのだ。

おそらく毎年のリズムと違い、仕事が思いがけず忙しいから、

だから予定通りにならないのだろう。

以前もそういうことがあった。

啓太とケンカをして、別れると言った後、やはりこんなことになって。

産婦人科の診察を受け、ストレスだとそう言われた。



今回もきっと……

だって、啓太は病気の治療で、子供を望むことは無理だと、そう言っているし……



でも……



100%ダメだということではないことも、私はネットで知った。

もしかしたら……



こんなふうにもやもやした気持ちのまま、新しい年を迎えることはよくない気がする。

私は早川先生のところに、挨拶をするために編集部を出た後、

これからあまり縁のなさそうな、産婦人科に立ち寄ることにした。



29-④




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テーマ : 恋愛小説
ジャンル : 小説・文学

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Author:momonta
育てた怪獣2匹は、すっかりかわいさを無くしたため、今や『犬愛』に目覚めたお気楽主婦です。日々のちょっとしたこと、趣味で取り組んでいる『創作』を、このブログに書いていきたいと思っています。
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なお、作品の無断転載やお持ち帰りはご遠慮ください。著作権は放棄していません。お願いします。

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