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ももんたの発芽室

ももんたのつぶやきや、つたないですが、創作を掲載しています。
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30 ひとりにしないで 【ボンベイ】 ④


30-④


「エ……いつ?」


おめでただと聞いたのは、『金沢旅行』に行く日。

それから……


『11月の終わりだったかな』


5ヶ月に入った頃、突然破水をしてしまい、すぐに病院に向かったけれど、

子供の心音は止まっていたという。



知らなかった。



啓太とのことを私が話しに行ってから、本当にすぐのことだ。

千波ちゃんは、順調に2人目を待っていると、ただそう思っていて。

母の話しだと、ショックでしばらく塞ぎこんでいたという。



私、知らなかったとはいえ、自分のことは色々と話しているくせに、

何ひとつ力になってあげていない。



『奏樹がね、今年は3人で過ごしたいからって、こっちにも来ていないのよ』



お兄ちゃんもショックだろうけれど、千波ちゃんのショックは、もっともっと深くて……



いつもなら遊びに来る和貴が来ないことで、父も寂しいのだろう。

私は母との電話を切った後、啓太の部屋に戻る。

そして、電話の内容を話した。


「そうか……」

「うん」


気持ちは千波ちゃんを励ましたいと思うものの、

正直、どう声をかけてあげたらいいのか、全然わからない。


「無理に頑張らなくてもいいと思うよ」


啓太はそういうと、お茶でも飲もうと立ち上がる。


「お兄さんがついているんだ。そこで支えあえるから、『夫婦』なんだし。
未央は、またいつものように元気に顔を見せたらそれでいいんだよ」

「そうかな」

「そう……」


啓太にそう言われ、私は湯飲みを持ったまま頷いた。

もし自分がその立場なら、やっぱり、パートナーと一緒にいたいと思うだろうから。

お兄ちゃんと和貴がいれば、きっと大丈夫。


「支え合えていたら、また恵まれるよ」

「うん……」


そう……

お兄ちゃんも千波ちゃんも、まだ若い。

今回はちょっと、慌ててしまっただけ。

もう一度きっと、二人のところに戻ってくるはず。


「そうだよね」

「そうそう」


私は、駅から持ってきたパンフレットをテーブルの上に並べていく。


「ねぇ、啓太。思い切って北海道はどう?」

「何を思い切ったんだよ。嫌だよ、寒いのに、わざわざ寒くなるなんて」

「……そうかな」


意見はすぐに却下されたが、こうして考えていることが楽しくて、

その日は夜まで、旅行先の候補を挙げ続けた。





「えっと……それでは……」


お正月気分も終わり、また仕事が始まった。

毎年恒例の、編集長の長い、長い、年頭挨拶。


「はぁ……毎年同じことを言っているって、誰か教えてあげてくださいよ」

「二宮さんが言ったら?」

「言ってもいいですか? 退職届書いて」


二宮さんはそう言いながら、小さくため息をつく。

そう、彼女の言うとおり、最初は別の話しをしているのに、

気付くと、いつも同じ話しに到着してしまうのだ。

自分が若い編集部員だった頃、毎日はとにかく戦いだったこと、

体も気持ちもキツイと嘆いていたが、書籍となって形になると、

その向こうに笑顔が見えてくるという話し。


「読者とのコミュニケーション、これが一番大事なことだ」


私の横では、すっかり新人色の消えた塚田君が、ナイスタイミングで拍手を入れる。

編集長は急にどうして拍手が起こるのかわからない顔をしたが、

私もそれに賛同するように、拍手をつけていく。


「ん? あぁ、まぁ……そういうことだな」


話しが終わったと勘違いされた編集長は、編集部員の拍手に送られ、

乗っていた新年の挨拶を途中で切り上げることになる。

塚田君の見事な切り込みで、今年は数分得をした。



「塚田君、いいタイミングだった。よくあの瞬間に拍手、入ったね」

「いや……あれを逃すと、収集がつかなくなる気がして」



その通り!



私と二宮さんは数回頷き、仕事を開始することにした。

早川先生は、オーストラリアから戻り、私に『コアラ』の柄が入ったポーチをくれた。

小さなぬいぐるみもセットされていたが、日本のコアラとは雰囲気が違う気がする。


「オーストラリアのコアラって、こういう顔なんですか」

「いやいや、私が見たのは日本と変わらなかったけれど、
オーストラリアの人たちの捉え方なのだろう」


さすがは漫画家。そこからは少しだけ構図だの、色の取り方だの、

専門的な言葉が並ぶ。

でも、手触りはとても気持ちがいい。

私はありがとうございますと受け取り、さっそく今年最初の仕事を依頼する。


「以前、対談をお願いしましたよね。あの第2弾です」


早川先生は、若い人たちと語り合うのは楽しいと、すぐに引き受けてくれた。



30-⑤




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Author:momonta
育てた怪獣2匹は、すっかりかわいさを無くしたため、今や『犬愛』に目覚めたお気楽主婦です。日々のちょっとしたこと、趣味で取り組んでいる『創作』を、このブログに書いていきたいと思っています。
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