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31 恋する胸の痛み 【カカオフィズ】 ②

31-②


啓太が『大阪』に行く1年。

啓太が、会社のこれからのために、新しい仕事を学ぶための時間にするのなら、

私は、自分のこれからを、しっかりと考える1年にしていこうとそう思う。

今年の秋、誕生日がきたら私はいよいよ30歳になる。

仕事の責任も、さらに大きくなっていくだろう。


「はい、完成」

「うん」


啓太から『大阪行き』を聞いて4日、

どよんとしていた気持ちが、少しずつ前向きに変わってきた。

啓太の決断を、私が明るく後押ししてあげなければ、パートナーとしては落第点。


「今日、正式に言われたよ」

「うん」


私は、あらためて啓太から出向の書類を見せてもらった。

『ダイヤモンドホテル』では、これから改装をして、

バイキングを全て『コレック』が仕切ることになるらしい。


「『コレック』になるの」

「まぁ、両方出来るようにするらしいよ。昼間も営業できるしね」

「へぇ……」


啓太は、フロント業務と、レストランの業務と、両方の勉強をするのだという。


「私もね、1年、しっかりと自分を見つめることにした」


後輩に伝えるものは伝えたい。

それをすることで、自分自身も見つめられる。


「未央」

「何?」

「俺、この出向がいい機会になったと思っているんだ」

「うん……」


『機会』とはどういうことだろう。

互いに、関係を見つめなおそうと、そういうことだろうか。


「大阪から帰ってきたら……一緒に暮らそう」


『一緒に暮らす』


「啓太……」

「もちろん、きちんと籍を入れてということ」



『結婚』ということだろうか。



『結婚』



「エ!」

「ん?」

「やだ、それ、何? それって、プロポーズになっていない?」

「そうか? あ、そうか……」


啓太はそういえばそうだなと、楽しそうに笑い出した。

笑っている場面ではないでしょう。

女にとって、どれほど『プロポーズ』が大切なものなのか、啓太は何もわかっていない。


「やだ、啓太。なんだか大阪行きのどさくさに紛れているじゃない、これ」


大阪があるから、戻ってくるから、だから一緒にって、なんだか……


「どさくさに紛れているわけではないよ。ただ、そういうタイミングが必要なんだって。
ここがあって、いつも通ってきていると、それが当たり前で、
別にそれでいいかなと思うようになるだろう」


仕事場に近い啓太のマンション。

そう、結婚していないけれど、結婚しているみたいなものだし。

別に、不便さなど感じていなかった。


「一度、未央と距離を置くことで、きっと、互いに必要な存在だということが、
あらためてわかる気がするからさ」



必要な存在。



確かにそうかもしれない。

便利なところに浸かってしまって、あらためてなど、求めなかったかもしれない。


「啓太……」

「何?」

「今のは私、聞かなかったことにするから」


私は両方の耳に指を入れるふりをする。

『プロポーズ』もどきな言葉は、聞かなかったことにするから。

啓太は、意味がわかったのか、『はいはい』と頷き、あらためてを約束してくれる。

私は、大阪に向かう前に、どこか旅行に行こうと提案し、啓太もそれに頷いてくれた。





カレンダーが2月に入り、眉村先生からの連絡が入った。

私は啓太と時間を合わせ、先生のオフィスにお邪魔することにする。


「俺が行っていいのか、先生の職場だろ」

「いいのよ。この用件は私もプライベートだもの。
啓太が行けば、お金もちゃんと払えるし」


最初は私一人で出向くつもりだったのだが、眉村先生から、

出来たら啓太を連れて来て欲しいというリクエストが入り、今日はこういう形になった。

先生は、園田さんが啓太をモデルにしたことを知っているため、

本人がどんな人間なのか、ちょっとだけ見たくなったらしい。



『これからのね、作品の参考に出来るかなって……』



という裏事情もからんでいる。

私は何も知らない啓太の横顔を見ると、つい笑みを浮かべてしまう。


「何……何がおかしいんだよ」

「おかしくなんてないです」

「笑っているだろう」

「いいでしょう、別に。好きな時に笑いたいの」



『私の大好きな人』



誰に見せても、恥ずかしいことなんてない。

私の……啓太。


「啓太、ここ」


啓太が通り過ぎそうになったので、私は背中を叩く。


「ここ? オフィスというより、豪邸だね」

「あ、そうなの。先生の仕事部屋は自宅の一部分だから」


私は角を曲がり、そのまま玄関へ向かう。

インターフォンを鳴らすと、すぐに『はい』と声がした。



31-③




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テーマ : 恋愛小説
ジャンル : 小説・文学

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育てた怪獣2匹は、すっかりかわいさを無くしたため、今や『犬愛』に目覚めたお気楽主婦です。日々のちょっとしたこと、趣味で取り組んでいる『創作』を、このブログに書いていきたいと思っています。
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なお、作品の無断転載やお持ち帰りはご遠慮ください。著作権は放棄していません。お願いします。

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