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31 恋する胸の痛み 【カカオフィズ】 ④

31-④


思いっきり主張するというよりも、ほのかに漂うくらいかも。


「うん……」


それでも、チョコ自体が文句なく美味しいし、しつこく残るような後味は全くない。

なんだろう、この感覚。


「美味しい……思っていたよりも、優しい味だった」

「ふーん」


啓太も同じように、チョコを口に入れる。


「どう?」

「日本酒、入っているか? これ」

「入っているわよ。やだ、わからない?」


私は悩む啓太を置いたまま、ミルク味を口に入れる。

こちらは王道とも言えるチョコだけれど、甘さが口を回ってくる感覚が、

とにかく心地よい。


「あ……私、どちらかといえば、こっちがいいかも」


どちらも美味しい。

でも、やっぱりチョコを食べたら、

『甘い』という感覚が残ってくれた方が嬉しい気がして。


「もしかしたら、体調でも違うのかもね、好み」


そう、今日は本当に仕事が終わった実感があるから、

疲れが甘さを呼び込むのかもしれない。


「ねぇ、もっと種類あった?」

「あぁ……いくつかあった」

「今度、私も買ってみようかな」


コンビニやスーパーでも、時々食べたくなってチョコレートを買うけれど、

こうして食べてみると、やっぱり違う。

値段には、値段の意味がある。


「ありがとう……啓太」


偶然出会ってから、いろいろなことがあって、時間を重ねて、

笑って怒って、泣き叫んだこともあったのに。

今は、それが全て、こんなふうに互いを思う心に変わってきた。


「なんだよ、急に」

「だって……」


私の目は、『ブルーストーン』の最後の日、いただいてきたグラスに向かう。

『カリフォルニア・レモネード』が入っていた、細長いグラス。


「啓太……」

「何?」

「私……寂しいって、大阪に毎日、電話するからね」

「電話? あぁ、4月から?」

「そうだよ。そうしたら、面倒でも声だけはちゃんと聞かせてよ」


啓太が新しいことを始めるのだから、邪魔にならないようにしようとは思う。

それでもやっぱり、こんな何気ない時間が、なくなってしまうと思うと、

気持ちはすぐに『グズグズ』し始める。


「声くらい、いつでも聞かせるよ」

「うん……」


いつでもという言葉が、心にしみる。


「啓太も食べなよ、美味しいよ、これ」


私はミルクチョコレートを啓太に渡そうとするが、

啓太は今はいいとそれを元に戻す。


「それなら……」


日本酒入りの方がいいのかと思い、それをつかもうとすると、

啓太の手が私の手を止めた。

啓太が求めているのは、チョコではないことに気付き、

そうだよねと互いに唇を近づける。

軽く触れた後、再び触れた舌先は、遠慮なく私の中に入り込む。

おかしな話しだけれど、ここまで歩いてくるまで脚が重かったのに……

今日はお腹がいっぱいになったら、きっと寝てしまうと思っていたのに……

啓太の視線と、『甘い』贈り物のおかげで、

どれほどの時間をこれから過ごしても、全然平気だと思ってしまう。


私から離れていく、啓太。


「……十分、甘かった」


啓太は、キスから甘さを味わったらしい。

二人で笑い、一緒にソファーから立ち上がる。

そう、唇の甘さだけでは満足できなくなった私たちは、そのままベッドへ向かった。

もっと甘い時間を、互いにとことん味わえるように。

啓太の手が、私に届くたび、期待と嬉しさに肌が赤身を帯びていく。


「未央……」


啓太の声に、私は小さく頷く。

『この先』を知っている私の心は、自然と啓太のベルトに手を伸ばしていた。





カレンダーはさらに歩みを続け、2月も残り数日となった。

私は、ひとみの赤ちゃん『沙織ちゃん』を見るために、家へお邪魔する。


「いらっしゃい」


ひとみは沙織ちゃんを抱っこしたまま、出迎えてくれた。

二人との再会は、そういえば病院以来になる。

啓太とのあれこれが重なり、

ひとみのことを考える余裕もなかったといえば、なかったのだけれど。


「沙織ちゃん、大きくなった」

「当たり前よ、未央が会ったの、病院でしょう」


ひとみは沙織ちゃんをベビーベッドにおろし、お茶の用意をしてくれる。


「ごめん……お祝いも送ってしまって」

「何言っているのよ、いいの、いいの」


『関根沙織』という赤ちゃんの名前。

ひとみは自分の名前がひらがななのが、あまり好きではないと話していて、

子供には綺麗な名前がつけたいと、そう言っていたっけ。

私は年末年始など、どちらの親も喜んだでしょうと聞き返す。


「もう大変だった。特に主人の実家は、ほら、前に話したでしょう。
お父さんの病気のこと。だから、本当にかわいい、かわいいで……」


ひとみのご主人のお父さん、検査で病気が見つかったと、以前聞いた。


「あぁ、そうだったね。で、どうなの」

「元気よ、元気。細胞を取って検査までしたけれど、結局ガンではなくて。
本当によかったのよ」


この小さな子供の存在が、色々な人たちを笑顔に変えることが出来る。

中谷家でも、和貴の存在があれば、父も母もなんでも聞いてくれそうだ。


「いいよ……子育てって。大変なところはもちろんたくさんあるけれど、
自分が成長できる」


ひとみは、夜泣きなどをされると、辛いこともあるけれど、

その数倍、喜びがあると紅茶を入れながら教えてくれる。

私はそうだろうなと頷きながら考えた。



31-⑤




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テーマ : 恋愛小説
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育てた怪獣2匹は、すっかりかわいさを無くしたため、今や『犬愛』に目覚めたお気楽主婦です。日々のちょっとしたこと、趣味で取り組んでいる『創作』を、このブログに書いていきたいと思っています。
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なお、作品の無断転載やお持ち帰りはご遠慮ください。著作権は放棄していません。お願いします。

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