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ももんたの発芽室

ももんたのつぶやきや、つたないですが、創作を掲載しています。
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32 甘いささやき 【ピカドール】 ②


32-②


「でも、何か連絡かも」

「あの音は、しつこい売り込み業者の音なんだ」


啓太は、あまり頻繁に話したくない相手の着信音を変えていると言う。


「そうなの?」

「そう。そんな業者の相手をするより、口を尖らせた未央の相手をしないと」


啓太の言葉に、私は思わず笑ってしまう。


「未央を一生愛していくと、約束したのだから……」



『約束』



この言葉に、ふと悠のことを思い出す。


「……うん」


私たちのために、傷つけてしまった人。

彼のためにも、しっかり前を向かなければ……



私たちはベッドに移り、そこからゆっくりと時を重ねていく。

あと1ヵ月後には、啓太はここからいなくなってしまう。

そう思うと、やはり寂しい気持ちは抑えられなくなって、

口には出せない不安が、急に押し寄せてくるときもあるけれど、

その指先の動きに、ウソがないことも互いに知っているから、

私は、啓太の思うままにして欲しいと願ってしまう。



深く愛されていることを、この身に刻み込んでと願い、

これ以上届かない場所へ、思いを運んで欲しいと、強く背中をつかむ。

誰にも触れさせない場所で……

あなただけを受け入れていたい。


「未央……」


私の名前。

目を開けると、そこには啓太の顔があって。

啓太はキスをしてくれた後、言葉を優しく耳元に届けてくれる。



『愛している』



その、確かなささやきを聞きながら、私は全てを受けとめた。





「向こうは寒いだろうね」

「そうだろうな」


次の日、私たちは谷さんの新居に向かって出発した。

眉村先生に描いてもらったイラスト画は、昨日、宅配便にお願いしたため、

今日の夕方、向こうに届くことになっている。

啓太がもらっている情報によると、お店の内装もほぼ終わり、

オープンをいつ迎えてもいいというくらい、順調に進んでいるという。


「写真が届いたんだ」

「どれ?」


啓太の携帯に送られて来た写真は、ログハウスのような外壁に、

かわいらしい木彫りがついていた。

飛騨高山は、外国の観光客も多いと聞く。

そんな人たちにも受け入れてもらえそうな、自然を取り入れた造り。

それでも、『ケーキ』を扱うのだとわかる、かわいらしい外観。


「谷さんに出向のこと話したらさ、それは頑張った方がいいって、そう言われたよ」

「うん」

「これからは、業種を越えた取り組みをしていかないと、
残っていくことが難しいだろうって」


啓太にとって、兄のような人、

その人の後押しがあれば、さらに前向きになれるだろう。


「そうだよね、雑誌だって、今は色々とコラボしているし。
中身はほとんど広告で、付録にお金をかけたり。後は、商品をとことん宣伝して、
その企業協力を得たりね」


電子書籍のように、ばら売りをしたり、売り上げをあげるための努力を、

怠らないようにすること、それがこれからの生き残る道なのかもしれない。


「こっちに行くから、京都に2泊するって言ったんだ」

「うん」


啓太が大阪に行くことは決まっているので、今回は、京都に立ち寄ることにした。

私たちの『全国制覇』の1歩が始まっていく。


「なんだよ、うちに1泊かって、ブツブツ言っていたよ」

「エ……だって」

「いいんだよ、谷さんだってわかっているから」


お邪魔するのは楽しみにしていたが、さすがに何泊もというのは……。

啓太と二人だけの時間が、これから取りにくくなるから。

1日を大切に過ごしたくて。


「うん」


新幹線は順調に飛ばし続け、到着時刻には正確に私たちを運んでくれる。

3月になったとはいえ、東京に比べたら、さすがにまだまだ寒い。

それでも、その分空気が澄んでいる気がして、私はホームに下りた後、

思い切り息を吸い込んだ。





「いらっしゃい」

「おじゃまします」


駅まで谷さんが迎えに来てくれたおかげで、予定の時間くらいで新居に到着した。

宅配便はまだ着いていないと聞く。


「そうですか、谷さん、あまりの素晴らしさに、驚いて腰ぬかしますよ、きっと」

「腰か」

「はい……」

「いやぁ……本当に? 嬉しい」


早速お店に案内されると、あらかじめサイズを教えてあげていたので、

奥さんから、イラストはここに飾るのだと、教えてもらう。


「お店の顔になりますね」

「でしょう。もう、先生が作品を出している間は、一生買い続けますからと、
伝えてくださいね」

「はい」


木の香りがする、いいお店。

ご夫婦で一緒の目標を持ち、ここで過ごせることがうらやましくもあった。


「岡野、準備はしているのか」

「はい。まぁ、向こうの寮に入るので、3月末でマンションを出ることと、
あとは、荷物を預けないとならなくて」


啓太の荷物がマンションから移動するため、

最後の2日は、私のところに来ることになっていた。


「1年か、きっと慌しいぞ」

「だと思います」


慌しく過ぎてくれたら、あっという間だったねと笑えるはず。

いただいたお茶を飲んでいたら、宅配便が到着する。

谷さんの奥さんはすぐに立ち上がり、

嬉しそうに印鑑を押すと、大きなダンボールを受け取っていく。

谷さんが、私たちが待っているお店に運んでくれた後、

テーブルの上に乗せ、中身を取り出した。



32-③




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Author:momonta
育てた怪獣2匹は、すっかりかわいさを無くしたため、今や『犬愛』に目覚めたお気楽主婦です。日々のちょっとしたこと、趣味で取り組んでいる『創作』を、このブログに書いていきたいと思っています。
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