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ももんたの発芽室

ももんたのつぶやきや、つたないですが、創作を掲載しています。
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33 願いが叶うなら 【マウントフジ】 ①

33 願いが叶うなら

33-①


『啓太が来る』



それだけで、ここのところ感じていた気だるさが吹き飛ぶから不思議だった。

休みの日だった私は、朝から買い物を済ませ、啓太が好きな日本酒を買ってくる。

食事は、簡単なもので毎日済ませてしまうと言っていた啓太のために、

今日は家庭的なものを作ろうと決めていた。

煮物もおひたしも、失敗なく出来上がっていく。

お酒にあうようなつまみも、それなりにつくり、冷蔵庫に入れた。

あとは啓太が来てから、美味しいお店で買っていた魚を焼いて……

ピンポンとインターフォンの音がしたので、私はすぐに画面を見る。


『俺……』


私はロックを解除すると、啓太の到着を待った。



「うわぁ……すごいな」

「いいでしょう、和食にこだわったの。日本酒も買ったし」

「へぇ……」


啓太の上着を受け取り、ハンガーにかけると、

旅立つ前に残しておいた部屋着を奥から出した。

この部屋は、突然両親の訪問があったりするので、啓太のものは、

全て一つのケースに入れて、押入れの奥に隠してある。


「ねぇ、どう? 新しい環境」

「うん」


離れて1ヶ月、色々と聞きたいことがあった。

職場の雰囲気、仕事の内容、東京と大阪ではどう違うのか、

夜も寝てなんていられないくらい、聞きたいことばかりだった。


「食べながらでいい? 腹減った」

「うん」


私はご飯を茶碗にいれ、お味噌汁を用意する。

啓太は小さなテーブルの向こう側に座り、嬉しそうに手を合わせる。


「うん……うまい」


よかった。


「なぁ、未央。お前、痩せたな」


啓太は部屋に入ってきてすぐにそう思ったと言い、ご飯を口に入れる。

そう、啓太がいなくなってからの1ヶ月、あまり体調がよくないせいで、

3キロ痩せた。


「年度が変わったでしょう。別に担当が動いたわけではないのに、
なんだろうね、また少しストレスなのかも」

「大丈夫か」


それでも、今日はとっても気分がいいと、私は笑ってみせる。

啓太が来てくれると思うだけで、急に変わるのだから、

やはりストレスなのだろう。心配させてしまうから、このクセをなんとかしたいのに。


「今日はね、朝から気分が良かったの」

「そうか……それならいいけれど。
俺も忙しくてなかなか連絡してないから、心配させたのかもしれないな」


啓太はこれからはペースもわかるようになるからと、

頻繁に連絡を入れてくることを約束する。


「ねぇ、買ってきた日本酒、出してもいい?」

「あ……うん」


啓太のために買ってきたのだから、出してあげないと。

私は立ち上がると、キッチンの方へ向く。



……が



なんだろう、これ、立ちくらみだろうか。



遠くなる意識の中に、『未央!』という啓太の声だけが届く。

あれだけ今日は好調だったのに、どうして……


「啓太……」

「ここに寝ていろ。すぐに救急車を呼ぶから」

「いいよ、平気」

「何言っているんだ、お前、顔色が悪いって」


そんなにおかしいのだろうか。

自分では見ることが出来なくて、わからない。

啓太の声が聞こえてくる。


「未央、住所……ここ、なんだっけ」


啓太、慌てている。

私は、息を吐き出しながら、町名と番地だけをつぶやいた。





サイレンの音が聞こえ、それはすぐに聴こえなくなった。

階段を上がる音がした後、救急隊員の人が来てくれて、

私に『歩けるのか』と聞いてくる。

私はもちろん『はい』と返事をしたが、体を起こそうとしても、あまり力が入らない。

なんだろう、これ。自分の体が思い通りに動かないなんて、

そんなこと今まで経験したことがなくて。

啓太が、自分が救急車まで私を運びますと宣言したが、

隊員さんは仲間に連絡し、外にストレッチャーが準備されてしまう。

どんどん話しが、大げさになっている気がする。


「手をお貸しします、いいですか」

「すみません……」


おかしい。

こんなふうになるなんて。

それでも、状態はもう『病院行き』に向かっていたため、

私は啓太に付き添われながら、救急車に乗ることになってしまう。

この場所から一番近い受け入れ場所は、『本間総合病院』だと聞き、

とにかく出発することになる。

サイレンがまた鳴りだし、救急車は、道路を走る車に放送を聞かせ、

道を譲ってもらっている。

こんなことになるのなら、一度病院に行って、薬をもらっておけばよかった。

せっかく大阪から啓太が戻ってきたのに、台無し。


「啓太……ごめんね」

「何言ってるんだ、大丈夫か」


私は声に頷きながら、ただ、流れに身を任せた。



33-②




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Author:momonta
育てた怪獣2匹は、すっかりかわいさを無くしたため、今や『犬愛』に目覚めたお気楽主婦です。日々のちょっとしたこと、趣味で取り組んでいる『創作』を、このブログに書いていきたいと思っています。
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