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ももんたの発芽室

ももんたのつぶやきや、つたないですが、創作を掲載しています。
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33 願いが叶うなら 【マウントフジ】 ②


33-②


病院に運ばれたからだろうか、

声を出せば先生がいることもわかるから、何が起きても平気だと思えたからだろうか、

ベッドに横たわりながら質問を受け、答えていく。

部屋にいた頃に比べたら、ずいぶん楽になったような。


「ご気分は」

「だいぶ、よくなりました」


救急担当の医者に、目の下側をめくられるようになり、

その後、腹部に聴診器をあてられる。


「体調が悪いと思い始めたのは、どれくらい前ですか」

「えっと……」


いつからだろう。

会社に休みをお願いした日、いや、それより少し前から気分はおかしかった。

私はそれを正直に話す。


「何か、思い当たるようなものはありますか」

「あの……」


以前も2度、仕事のストレスが原因で、体の調子が崩れたことを話すと、

男性医師は納得しているのか、頷いてくれる。


「少し、待ってもらってもいいですか」


レントゲンでも撮るのだろうか。

どうしよう、もっと重い病気なのかも。

そばについている啓太も、心配そうな顔をする。


「あの、先生」

「大丈夫ですよ、ちょっと確認したいことがありまして」


医師は内線用の電話を取り、どこかに連絡を取っていた。

ベッドに寝かされてから40分くらい経っただろうか。

部屋には私と啓太だけになっている。


「啓太……」

「遅いな、先生」

「薬、くれないのかな」

「うん」


すると扉が開き、前に診てくれた先生と、もう一人の先生が入ってきた。


「中谷さん……」


最初に診断をしてくれた医者が、啓太に一度外に出て欲しいと話す。

啓太は『はい』と返事をして、心配そうな顔を見せながら廊下へ出た。

どうして啓太が出されてしまうのだろう。

やっぱり、何か大きな病気が……


「あの……妊娠の検査は、されましたか」


その医師は、総合病院の産婦人科の医師らしかった。

私は『いいえ』と首を振る。


「今までも同じようなことが2度あって、両方ともストレスという診察でした。
なので、今回も……」

「妊娠の可能性はありませんか」


医師は、もし妊娠しているとなれば、薬も渡せないものがあると、そう付け加える。



『妊娠の可能性』



全くないとは言えないが、啓太のことを思えば、それは……


「もし、よろしければ、診察しますが」


可能性は低いだろうけれど、でも……


「お願いします」


私はそう返事をし、看護師に支えられながら、ゆっくりと体を起こす。

ふらつくような感じもないし、頭も痛くはない。

廊下に出ると、啓太が立ち上がった。


「未央……」


医師は啓太の事情など知らないため、これから産科に向かいますと説明する。


「産科……」


啓太の顔が、私を見た。


「診てもらってくるね」


また、啓太をガッカリさせてしまうかもしれないけれど、

可能性がゼロではないのだから……

私は看護師に用意してもらった車椅子に乗る。


「俺が押します」


啓太は車椅子をゆっくり押してくれる。



こうなったら……奇跡でもなんでもいい。

私たちに……



新しい幸せを運んで欲しい。



エレベーターの扉が開き、私たちは無言のまま乗り込んだ。



『産婦人科』


時刻は夜の9時を過ぎているけれど、お腹が空いたのか、

泣いている赤ちゃんの声が聞こえた。

わき腹をおさえながら、廊下を一人で歩く妊婦さんとすれ違う。

これからきっと、お産に臨むのだろう。


「どうぞ……」


体調がおかしくなり、2度乗った診察台。

今日で3度目になる。


私は医師に言われるように座り、天井を見た。

しばらくすると、今度は横になるように言われ、その指示に従う。

お腹にゼリーのようなものが塗られ、機械を当てられた。

白黒の何やら映っている画像。


「中谷さん……」

「はい……」

「おめでたですよ」

「エ……」



『おめでた』



「症状をうかがって、今、触診とエコーで確認しました。体調の変化の時期を考えると、
妊娠7週目に入っていると」


医師は画像に映るものを指差し、これが胎児の状態だと教えてくれる。

あまりに突然の出来事に、私はどう反応していいのかわからなかったが、

心臓が動いているのだと聞き、一気に涙が溢れ出す。



『赤ちゃんが出来た』



啓太と私の赤ちゃん。

今、間違いなく、このお腹の中で、頑張ろうとしている。


「先生、本当ですか」

「はい」

「でも……」


私は、啓太が『悪性リンパ腫』の治療をしていたことを告げて、

可能性はほとんどないだろうと思っていたことを話した。先生は話しを聞き、

そうですかと頷いてくれる。


「まぁ、確かに、出来にくい状態だったのかもしれませんが、
治療から5年ですよね。それに、現実、こうして授かっていますから」


自分の診察には間違いないと、もう一度念押ししてくれる。


「ありがとうございます」


それまでのだるさも、辛さも、どこかになくなってしまった。

私は涙の顔を、いただいたティッシュで拭き、頭を下げるとすぐに廊下へ出た。



33-③




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Author:momonta
育てた怪獣2匹は、すっかりかわいさを無くしたため、今や『犬愛』に目覚めたお気楽主婦です。日々のちょっとしたこと、趣味で取り組んでいる『創作』を、このブログに書いていきたいと思っています。
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