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ももんたの発芽室

ももんたのつぶやきや、つたないですが、創作を掲載しています。
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33 願いが叶うなら 【マウントフジ】 ③


33-③


「啓太……」

「うん」

「ねぇ、聞いて。私、赤ちゃんできたって」


ウソではないのだ。

先生が大丈夫だと、そう言ってくれた。


「……本当に?」

「そう。今……」


私は、先生が印刷してくれたエコーの画像を啓太に見せる。

啓太の視線が、下に向かった。


「これ……ここが赤ちゃんなんだって」


人の形などしていないし、私たちにはどこで判断しているのかなんて、

全然わからないけれど、それでも紛れもない事実がここにある。

啓太の目は、全く動かなくて……


「啓太……喜んでくれるよね」


思わずそう聞いてしまった。私は涙が出るほど嬉しかったけれど、

啓太が喜んでくれなかったら、望んでいないのなら、困ってしまう。


「うん……」


両親の遺伝子など、残す必要性を感じなかったと言っていた過去。

それでも……


「驚きと、嬉しさでさ……未央、ごめん、言葉が出ない」


啓太は全身の力が抜けたように、廊下の椅子に座り込んだ。





結局、病気とは言えない状態だったため、

私たちは、落ち着いてからタクシーで部屋に戻った。

夕食の準備をして、食べる寸前だったものは、全て冷え切っている。


「冷えちゃったね、お味噌汁温めるから」

「うん……」


茶碗に入れたご飯も、固まってしまっている。

啓太は食べられなくもないけれどと、少し口に入れたので、

私は、それはやめたほうがいいと、茶碗を取り上げる。

それから20分後、色々と温めなおして、やっと止まった夕食が再開された。

『妊娠』の事実がわかり、こうして向かい合っていることが、どこか気恥ずかしい。


「『母子手帳』もらわないといけないね」


私は、この住所に引っ越しをしてきた時のことを思い出す。

確か、最寄り駅から反対側に出て、10分くらい歩いた場所に役所があった気がする。


「未央」

「何?」

「なるべく早く連絡をして、ご両親に挨拶に行こう」


啓太は、『嬉しい事実』が判明した以上、黙っているわけにはいかないと、私を見る。


「突然のことで、驚かれるだろうけれど、きちんと話しをして、
わかってもらわないと」


啓太と二人で、『結婚』の許しをもらいに行く。


「なんだか、お前に負担ばかりかけてるな」

「啓太……」

「まさかこうなるとは思っていなかったし、でも、明日は大阪に戻らないとならないし、
ご両親への連絡も、体のことも」


私はまだ開かないままになっている、今日のために用意したお酒を見る。


「そんなふうに考え込まないでよ。私たちにとっては、嬉しいことなのだから。
驚くことは驚くでしょうけれど、わかってくれる」


そんな自信、本当はどこにもなかった。

どちらかというと、順序や、立場など、形式的なことをしっかりと意識する父親のため、

子供が先に出来てしまっての結婚など、不機嫌な顔をされることは予想が出来た。

それでも、私の気持ちは決まっている。


「これ、飲みなよ啓太。せっかく買ってきたし。私、おつまみも用意したから……」

「いや、いいよ」


啓太は日本酒の瓶に手を置き、開けなくていいとそう言った。

私は、ワインの方がよかったのかと聞き返す。


「違うよ、そうじゃなくて。子供が出来たとわかったから、未央はこれから禁酒だろ。
だったら俺もそれでいい」


一緒にいるときには、お酒は必要ないからと、啓太は瓶を下におろす。


「そんなこと、気にしなくてもいいのに」

「いや、せめてもの参加意識」


男はどう頑張っても何も出来ないからと、啓太はそう言った。

その代わりに、つまみだけは食べさせてもらうと言い、冷蔵庫の前に向かう。


「うまそう」

「でしょう、頑張ったの」


私は啓太の後ろから一緒に冷蔵庫の中身を見ると、一番の自信作を取り出した。





食事を片付けたテーブルの上に、乗っているのは湯飲みが2つと、

今日、いただいたエコー写真。啓太は手を伸ばし、改めて写真を見る。

わかっているけれど、こうして『事実確認』をしないと、不安になってしまうのだ。

目を閉じてみて、次に開くと、ウソだったと言われるのではないかと。

まさしく『奇跡』と言えるくらいの出来事だから。


「あの日……」

「エ?」

「ほら、『ブルーストーン』で、あのグラスに入っていた
『カリフォルニア・レモネード』」

「うん」


本当は元彼女が頼んだ『カリフォルニア・レモネード』。

それが啓太の目の前にあったため、私は啓太が頼んだものだと思っていた。

入っていた氷が溶けていくのがわかり、放り出されている飲み物の状態に、

私は自分が酔っていたこともあって、ただイライラしていた。


「カクテル言葉っていうのがあるのを、知っている?」

「カクテル言葉? 何それ、知らない」

「うん、俺も知らなかったんだ。この間、ホテルの研修の中で偶然、それを知って、
仕事が終わった後とか、ヒマな時間にちょっと調べてみた」


啓太は、夜、寝る前などに、携帯で調べてみたと話してくれる。

カクテルには色や作り方など、材料の変化で、

特徴がそれぞれにあることはもちろん知っているけれど、

『花言葉』や『ジュエリー言葉』のように、『カクテル言葉』があるなんて、

それは知らなかった。



33-④




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Author:momonta
育てた怪獣2匹は、すっかりかわいさを無くしたため、今や『犬愛』に目覚めたお気楽主婦です。日々のちょっとしたこと、趣味で取り組んでいる『創作』を、このブログに書いていきたいと思っています。
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