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ももんたの発芽室

ももんたのつぶやきや、つたないですが、創作を掲載しています。
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33 願いが叶うなら 【マウントフジ】 ④


33-④


「『カリフォルニア・レモネード』のカクテル言葉は、『永遠の感謝』だった」

「永遠の感謝……」

「そう、常に『ありがとう』という気持ちを持つということなのかもしれないけれど、
それを知って、すぐに未央のことを考えた」


啓太は、隣に座る私の肩を引き寄せる。

体だけではなく、その行為に、心も一緒に近付いていく。


「おもしろいよな、あの酒、本当は俺のものではなかったのに。
でも、未央が勘違いして。その未央のおかげで、俺はあの日を乗り越えて。
酔っ払っていながらも、励ましてくれる優しさに、こうして人生を動かしてもらった。
子供が出来なくても、二人で生きていく楽しさもあると、そう言ってくれたし。また……」


また……

言葉の続きは、何?

私は啓太の顔を見る。


「考えられないくらいの奇跡も、未央が見せてくれた」


そう、『奇跡』。

二人だけではない未来。

私は啓太の手にあるエコー写真を見る。


「啓太だからでしょう。啓太だから、どんな未来も受け入れられるし、
どんな未来も、築けると思えるのは……」


そう、誰でもいいわけではなくて、啓太と一緒だから、

1日を積み重ねていく未来が、素敵だと思える。


「啓太がお母さんのことを振り切れたこととか、お世話になった谷さんに、
応えようとする気持ちの余裕がきっと、こうした時間につながったのだと思う」


ひとりは楽だけれど、その分寂しい。


「もし、啓太のそんな気持ちの変化に、私が関われているのだとしたら、
それは何よりも嬉しいことだけれど」


『愛せる人』がいること、『愛してくれる人』がいること。

それが人を強くもするし、大きくもするのだと、あらためて思う。


「啓太。父は昔かたぎの人間だから、
結婚もまだしていないのに子供が先に出来たって言ったら、きっと、不機嫌だと思う。
でも私たちは、悪いことをしていたわけではないから、だから……」

「大丈夫、そんなことは気にするな」


啓太は、大阪に戻った後、スケジュールの連絡をすぐにするからと言い、

お茶に口をつけた。





啓太が大阪に戻り、私は病院でいただいた用紙を持ち、役所に向かった。

予定日は来年の1月中旬。

『母子手帳』をもらい、それをバッグの中に入れた。





「あ、いたいた、中谷。3時から会議な」

「はい」


仕事には午後から参加をする。

いつもと同じ手帳を持ち、先生への連絡や、売り上げのチェックを済ませた。

隣では二宮さんが、読者からの手紙を振り分けている。

編集長は、一番下の息子さんが、買ってきてくれたという肩たたき機を肩に当て、

なんとなく幸せそうな顔をしている。



『妊娠の事実』。

いつ、話をしたらいいのだろう。

職場としては、結構自由な時間も多いけれど、少しずつ体形が変わるかもしれないので、

ずっと秘密というわけにはいかないし。


「あ……中谷さん」

「何?」

「斎藤さんが、今週末、飲みに行かないかと誘ってくれましたよ。
同級生が経営するお店があるそうで、みんなに場所を知ってもらって、
使ってもらいたいからとかなんとか……どうします?」


二宮さんは、料理がおいしいらしいですと、積極的な顔をする。

春までこの編集部にいた斎藤さんの誘いだと、確かにグルメなだけに、

外れはなさそう。



あ……



「ごめん、ちょっと……今回はやめておく」

「エ……やめます?」


二宮さんは、すぐにお店を調べてみたけれど、おしゃれでよさそうでしたよと、

さらにプッシュしてくる。


「お仲間価格でと言われているし」


お仲間価格か。

斎藤さん、場を盛り上げるのがうまいしな。


「ごめん、ちょっと用事があって」


でも、ここは流されるわけにはいかない。

何も変わっていないように見える私は、とんでもなく変わったのだから。


「話を聞かせて。いいお店だったら、ぜひ、利用してみたいし」

「わかりました」


二宮さんはそういうと、おもしろい手紙が来ていますよと、ピンク色の封筒を差し出した。





『編集長、実は結婚することになります。それに、もうおなかに子供もできていて』



結局、その日は誰にも言えないままだった。

やはり、啓太と時間を合わせて、まずは新潟にいる両親に告げるべきだろう。

『母子手帳』をバッグから出して、あらためて見る。

私にも、そして兄にも、この手帳があった。

母は、へその緒と一緒に、小さなケースに入れて、保存してくれていた。

兄の手帳には、かわいらしいうさぎのイラストがついていたのに、

私のは、なぜかひまわりの花だけで、どうでもいいことなのに、幼い頃、

兄の手帳の方がいいと、泣いたことも思い出す。

もらった場所が違っていたので、

そんなことは母に怒ってもどうしようもないことだったのに、

母は、私の手帳に、かわいらしいシールをつけてくれて。



そうだ……

母には、先に話をしたほうがいいかもしれない。



啓太と二人で挨拶に行くとはいえ、その時二人が初めて聞くという状態ではなく、

母にだけは事実を話し、知っておいてもらった方がいいかもしれない。

あの父の性格だ、話の途中で怒ってしまい、啓太と二人、出入り禁止にでもなりかねない。

私は新潟の家の電話番号を呼び出し、ボタンを押すと、大きく息を吐いた。



呼び出し音が、数回鳴る。

もしかしたら、いないのだろうか。

そう思ったとき、受話器の向こうから母の声がした。


『もしもし……』

「お母さん? 未央」

『あぁ、うん。どうしたの』


私は、受話器の近くに父はいないかと、まず尋ねる。

すると母は、父が今日、米作りをお互いに手伝っているお宅へ出かけていると、

教えてくれた。



33-⑤




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Author:momonta
育てた怪獣2匹は、すっかりかわいさを無くしたため、今や『犬愛』に目覚めたお気楽主婦です。日々のちょっとしたこと、趣味で取り組んでいる『創作』を、このブログに書いていきたいと思っています。
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