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ももんたの発芽室

ももんたのつぶやきや、つたないですが、創作を掲載しています。
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34 守りたい 【ブルドック】 ③


34-③


「さすがだな、お兄さん」

「うん……」


その次の日、啓太が大阪から戻ってきてくれた。

顔を見ればすぐに『体調はどうなのか』と心配してくれる。


「新潟で会ったでしょう。それから何日だと思っているの。
何も問題はないし、順調だと思うわよ。ただ……」


今までは気にしていなかったことを気にするようになったと言いながら、

冷蔵庫から野菜ジュースを取り出してくる。


「こういうもの、あまり得意ではなかったけれど、コンビニに行っても、
前はコーヒーとか缶チューハイの方へ目が行っていたのに、今はいかないの。
野菜ジュースとか、天然100%とか、『身体にいいはず』というものを、
探してしまうと言うか……」


啓太は笑いながら、あまりこだわると、それがストレスになるぞと言ってくれる。


「いいの、こうして考えているのが今は楽しいんだから」


私がそういうと、隣に座っている啓太の腕が、優しくこちらに伸びてきた。

触れた肩、腕、指。

なにげないぬくもりが、心の奥までじんわりと暖めてくれる。


「未央……」

「何?」

「俺さ、30数年間生きてきて。間違いなく今が一番幸せだって、そう思える」



啓太……



「俺がもらった幸せ分、どこまで返せるのかわからないけれど、
これから一生かけて、未央に返済していくから……」


一生かけてだなんて、大げさじゃないと言おうとしたけれど、

啓太の目が潤んで見えて、何も言えなくなった。


「笑ったり、怒ったりしながら、これからも1日ずつを楽しく積み重ねていこう」


1日を積み重ねる未来。

そう、私と啓太が最初に意気投合したのは、そのことだった。

遠い未来にどうするかではなくて、毎日を積み重ねることで、

それが『未来』になること。


「……それって、プロポーズなの?」

「あぁ……」


もう、『婚姻届』も書いたのにと、私は笑ってみせる。

それでも、啓太の気持ちが嬉しくて、

結局、言葉なんてどうでもいいのだとそれがよくわかった。



『大好きだと言える人を、この世の中から探し出せたこと』



私も啓太も、その日はのんびり過ごしながら、未来を夢見て眠ることにした。



そして、私は正式に『岡野未央』になる。

職場にも報告はしたが、仕事は『中谷未央』のまま続けることにした。





「おめでとう未央ちゃん」

「ありがとう」


兄に言われた通り、私は千波ちゃんに『結婚』の報告を入れ、

そしてそこにもう一つの『おめでた』がついていることも話した。

千波ちゃんはすぐにでも遊びに来てと嬉しそうに言ってくれて、

私も仕事の都合がいい日に、おじゃまする。


「人妻なのね……」

「千波ちゃん、そういう言い方しないでしょう、普通」


私は、ゴタゴタしていたため、結婚指輪もまだ買えていないと何もない指を見る。

千波ちゃんは、心にあれば十分よと、自分の胸を軽くトントンとたたく。


「お義父さんもお義母さんも喜んだでしょう」


千波ちゃんが紅茶の準備をしながら、そう聞いてくれたので、

私は父と母の温度差を、感じたままに語った。


「昔から、きちんとしていることを望む父だから、まぁ、こうなるかなとも、
予想していたしね。ダメだとか、何しているんだと言われなかったことだけでも、
いいのかなと」


私は何気なく言ったつもりだったが、

千波ちゃんは『そう』と、少し悲しそうな顔をする。


「大丈夫よ、なんだかんだ言っても、生まれたらかわいがるって。
親なんてそんなものだし」


私は、お付き合いしている人がいることも言っていなかったから、

いろいろなことが起きて、キャパを超えたのだと、笑ってみせる。


「そうだね」


千波ちゃんは、男親というのは、素直になれないからねとカップを運んでくれる。

その日は、和貴の通う幼稚園の裏にある、洋菓子店の焼き菓子を並べ、

二人でお茶にした。





「すみません……」


カレンダーが5月の終わりを迎えた日、朝から、強烈な吐き気に襲われた。

なんとか電話が出来るタイミングを作り、編集部に連絡を入れる。

体調を崩すことは、今までにも数回あったので、

しばらくしていたら戻るだろうと考えていたのに、通勤時間になっても、

それを過ぎても一向によくならず、これはと思い、休みをもらうことにした。

編集長はすぐに理解してくれて、『とにかく休め』と電話を切ってくれたが、

ありがたいと思いベッドで横になっても、その瞬間にまた吐き気が襲う。

水を飲んでみたり、テーブルに突っ伏してみたり、楽になることをしようと模索しながら、

これが『つわり』なのかもしれないと、そのとき初めて考える。

以前、ひとみにもこんな時間があった。

食べ物の匂いはもちろんダメだし、換気扇などから漂う匂いにも、

すぐ反応してしまったと聞いている。

1日経てばすぐに治るというものではないため、これからこんな時間が、

どれくらい続くのかと、すでに気持ちが落ち込み始めた。


「あぁ……」


啓太の名前を呼びたくなったが、大阪にいることもわかっているし、

妊娠、結婚の流れから、この2ヶ月の中で、何度休みを取らせているかもわかっている。

ここは一人で乗り切るしかないと、今出来ることをしようと、深呼吸を繰り返した。



34-④




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Author:momonta
育てた怪獣2匹は、すっかりかわいさを無くしたため、今や『犬愛』に目覚めたお気楽主婦です。日々のちょっとしたこと、趣味で取り組んでいる『創作』を、このブログに書いていきたいと思っています。
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