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ももんたの発芽室

ももんたのつぶやきや、つたないですが、創作を掲載しています。
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35 思いやり 【ハイ・ハット】 ②


35-②


母が東京に来てくれてから、洗濯物や掃除、食事の準備など、

本来ならしなければならないことが私の日常から消えていき、

仕事と妊婦という項目に減ったからなのか、数日で状態は明らかに上向きとなり、

しばらくすると、本当に『どうしたのだろう』と思えるくらい体調が変わった。

食べ物の匂いを嗅いでも気にならないし、

いや、むしろ、おいしそうだと思えるようになってくる。

さらに、街を歩いていても、口に入れるものが自然と目に入ってしまい、

『試しに食べてみよう』と、つい、買ってしまうことが増えた。


「あはは……、そうそう、そうなのよ」


私は妊婦の先輩、ひとみの家に遊びに行く。

そろそろ1歳になろうかという『沙織』ちゃんは、何もかもに興味があり、

少し目を離していると、両手両足を使ったハイハイで、どんどん進んでしまう。


「あぁ……さおちゃん、ほらほら」


リビングの奥に少し広めのスペースがあり、

そこには、沙織ちゃんが口に入れても問題が無いようなおもちゃがおいてあった。

お気に入りの鈴が鳴るおもちゃを手に持ち、沙織ちゃんは寝転がりながら振ってくれる。


「かわいくなったね、ひとみに似ている」

「そう? 主人は自分に似ているって、絶対に譲らないの。否定するのも面倒だから、
そうだよね、そうだよねって合わせているけれど。自分の小さい頃なんて、
本当ならわからないでしょう。もう、沙織がやることは全てOK。
ようするにベタベタなのよ」


ひとみは、啓太も子供が生まれたらきっと、

ペロペロなめてしまうかもしれないと笑い出す。


「ペロペロって……」

「いや、未央、何言っているのという顔でみたけれど、これ、大げさではないからね。
赤ちゃんって本当にほっぺたとか、ぷっくりしているでしょ。
マシュマロみたいだとかいって、すぐにつまんでみたり、鼻を舌でなめてみたり?」


ひとみは男の行動は理解が出来ないと笑いながら、一人で遊んでいる沙織ちゃんを見る。

私と話しをしていながらも、心の中ではきちんと母としてのバランスを取っていた。

学生時代からの同級生で、

いつも相談されて応えていたのは自分のような気になっていたけれど、

なんだか、『差』を感じてしまう。


「まぁ、私にはひとみという頼りになる先輩がいるから、安心しているわ」

「何よその言い方、未央はそんなこと思っていないでしょう。
ひとみがなれているのだから、私が母親になれないわけがないと思っているはず」


ひとみは、その通りだと一人で頷き、話しを終わらせてしまう。

私は、沙織ちゃんの小さな足を見る。


「いや……本当に、そう思っているよ。仕事ではね、自分のやり方もあるし、
自分でも築いてきたものがあるって、多少思うこともあるの。
でも、妊婦は別。母とか、眉村先生とか、それから兄嫁の千波ちゃんとか、
もちろんひとみも……。みなさんの声とか、励ましとかが、本当に心にしみるというか、
響くというか」

「うん……」


ひとみは、私もそうだったかもと、意見に賛同してくれる。


「母親の存在が、特に際立ったかな……私は」


ひとみは、そう言いながら立ち上がると、さっきまで声を出していた沙織ちゃんに、

小さなケットをかけてあげる。


「寝ちゃったの?」

「うん、よくあるのよ。声を出しながら遊んでいて、コテンと寝ちゃうこと」


ひとみは、ベッドに動かそうとすると起きてしまうので、

いつもこうしていると、教えてくれる。


「未央」

「何?」

「女の子だといいね」


ひとみは、沙織ちゃんの遊び相手になるからと、私のお腹に手を当てる。


「あ……いやいや、男の子でもいいな。年下の旦那さんっていうのも悪くない」

「何その話。まだ、性別なんてわからないわよ」

「わかるようになったら、聞くの?」


ひとみは、お腹から手を離し、元の場所に座ると、

啓太はどう思っているのかと、聞いてくる。


「うーん……そういうことについて、話したことはないけれど、
聞かないような気がするな」


啓太に尋ねたわけではないから、あくまでも私の感覚。


「どうして?」


どうしてなのか……


「私と啓太にとっては、性別なんてどうでもよくて、こうして授かってくれたことで、
本当に奇跡とも言えることだから」


『悪性リンパ種の治療』、『崩れてしまった家族』

『一人で生きることの気楽さ』、そういったもの全てが、啓太を作っていた。


「奇跡ねぇ……」


ひとみは『そうだよね、そういう気持ちになるよね』と言いながら、

すやすやと寝ている沙織ちゃんを見つめている。


「どっちでもいいから、早く会いたいなと思うだけ」


私の心の思いに、ひとみは大きく頷いてくれた。





つわりも終わり、安定期に入った夏の日、

私は、以前から約束していた通り、啓太のいる『大阪』に向かった。

『新幹線』では久しぶりに富士山を見たし、名古屋城や京都のタワーも窓から確認する。

まだ、夏休み前ではあったが、結構乗車する人は多く、

指定席を取っておいてよかったと思いながら、東京駅で買ったお弁当を食べた。



35-③




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Author:momonta
育てた怪獣2匹は、すっかりかわいさを無くしたため、今や『犬愛』に目覚めたお気楽主婦です。日々のちょっとしたこと、趣味で取り組んでいる『創作』を、このブログに書いていきたいと思っています。
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