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ももんたの発芽室

ももんたのつぶやきや、つたないですが、創作を掲載しています。
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36 永遠の感謝 【カリフォルニア・レモネード】 ③


36-③


そして、季節は春になり、桜が満開となる頃、1年の出向を終えた啓太が、

私と娘……『莉子(りこ)』が待つマンションへ戻ってきた。

引っ越しの日、以前預けた啓太の荷物も、新しい部屋に運んでもらったため、

懐かしいあのベッドが、寝室の中にドンと置かれることになる。

職場は、以前と同じように数店舗の管理だが、

『ダイヤモンドホテル』との提携が決まり、

さらに忙しさを増しそうな様子だった。


「ねぇ、啓太。『コレック』の関係は、これだけ?」


私は名前と住所を書き出したメモを、前に座る啓太の方へ置く。


「えっと……そうかな。谷さんのも入れた?」

「谷さんは別に書いてある」


莉子が誕生し、それぞれの職場仲間から、お祝いが届いたため、

そのリストを作ることになった。私の職場からも、編集部員一同に、編集長、

そして、眉村先生や早川先生からもお祝いが届けられる。


「それにしても……」

「うん」


啓太の手にあるのは、本日届いた眉村先生からの色紙。

以前、谷さんの奥さんに描き上げたようなイラスト色紙を、

今回は、莉子をモデルに……いや、正式に言えば、莉子の少し先を予想し、

かわいらしく仕上げてくれた。


「引っ越しを終えてから、莉子の写真、送ってくれって言うから送ったの。
そうしたら、こんなふうに」

「うん……」


眉村先生が、今まで赤ちゃんを作品中に描いているのは、見たことがなかった。

そうなると、こういったタッチを見るのは、私たちだけかもしれない。


「眉村先生、うちでの連載は終わったけれど、忙しいはずなのよ。
それでも、これはいい出来だって言って、
次の作品では、赤ちゃんを登場させようかしらって」

「ふーん……」


啓太は立ち上がると、莉子のベッドがある場所の横に、

その色紙を立てかける。


「莉子は、みなさんからお祝いをもらえて、幸せだな」


啓太が、少しずれた莉子のケットを直してくれているのを見ながら、

私は入れたお茶を一口飲んだ。





それから1週間後、新潟の両親があらためて莉子の誕生を祝うために、

我が家を訪れた。結婚への気持ちは固まっていたものの、

莉子が出来たことがわかり、慌てて新潟に向かい、

そこからなかなか父と顔を合わせる機会がなかったため、

どうぞと言いながらも、正直、啓太も私も緊張した。

しかし、当時、あれほど不機嫌そうに見えた父が、

今回は満面の笑みを浮かべて現れたため、思わず二人で顔を見合わせた。



「あはは……満面の笑みね。でも、そういうものかも、親って」

「全く、新潟に行った時には、あれだけ不機嫌そうな態度を取っておいてさ。
いや、確かに、千波ちゃんのフォローで、お父さん、
お母さんを東京に来させてくれたけれど、
啓太に対しては反対しないと言っただけでしょう。
それなのに、自分から地酒を持ち込んで、
『啓太くん、啓太くん』って誘って飲み始めるからさ」


新緑の眩しくなる5月、よりかわいらしさを増した沙織ちゃんを連れて、

ひとみが我が家にやってきてくれた。

母として先輩とも言える同級生は、我が家の出来事を頷きながら聞いてくれる。


「それはきっと、お父さんもタイミングをどうしようかと考えていたのよ」

「タイミング?」

「そう……。啓太さんに対して、どう歩み寄ろうかなと。
よし、莉子ちゃんが生まれたから、一気に飛び越えちゃえって」


ひとみは左手を頭の上に動かした。

私はそうかなと、首を軽く横に曲げる。


「だから言ったでしょう。赤ちゃんにはすごい力があるのよ。さびついた歯車も、
回せてしまうくらい」


ひとみはそういうと、部屋の奥に向かおうとした沙織ちゃんを捕まえる。


「コラ……」

「いいわよ、ひとみ。沙織ちゃんが口に入れたらいけないようなものは、
とりあえず全部しまっているし。ある程度うろうろしてくれても」


私は見える範囲にいてくれたらと言いながら、莉子のおむつを替える。


「もうねぇ……こっちの想像をはるかに超えるようなことをするときがあるの。
歩けるようになったら、本当に目が離せない」


ひとみはそういうと、沙織ちゃんのおもちゃを取り出し、興味をそこに向けていく。


「ドラマを見ていても、料理を作っていても、もう、全然おかまいなしで」


ひとみは沙織ちゃんのぽっぺを軽く押さえるようにする。


「それは仕方がないでしょう。空気なんて読めるわけがないし」


言葉の意味がわかったわけではないだろうが、

沙織ちゃんが私に向かってニッコリ笑ってくれる。


「ねぇ、そういえばさ、未央と二人で旅行に行ったよね」

「あ、行った、行った。湯布院でしょう。なんだか懐かしいね」

「本当……あんなふうにゆっくりする時間なんて、今はとてもないもの」


ひとみと一緒に行った湯布院のホテルに、『ブルーストーン』に似たお店があった。

そこから過去を少しずつ思いだし、思い出して欲しくないと避けていた啓太とも、

ぶつかり別れてしまうようなことになったが、

あのぶつかりと追求がなければ、今のこの時間もなかったかもしれない。

不安定な状態を一度思い切り壊せたことが、確かな絆に変わってくれたのだから。


「ねぇ、未央。莉子ちゃんがもう少し大きくなったらさ、
お互い旦那様にお願いして、また行こうよ」

「湯布院に?」

「ううん、場所はどこでもいい。たまにはゆっくりしたい」


ひとみは、横になって遊ぶ沙織ちゃんの足を持ち、左右に振った。

沙織ちゃんは遊んでもらえていると思うのか、

キャッキャとかわいらしい声をあげる。

私は莉子を抱き上げ、体を揺らしながら、あやしていく。


「そうだね……」


楽しい話をして、温泉に入り、おいしいものを食べる時間か……


「母にも休暇が欲しい」


ひとみはそういうと、沙織ちゃんに向かって、

『いいよね』と笑いながら話しかけている。

互いにゆっくり話をしたいのは山々なのだが、あっちで泣き声、

こっちでぐずり声が聞こえてくるので、『母の休暇』を夢見ながら、

近況だけを語り合う時間になった。



36-④




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Author:momonta
育てた怪獣2匹は、すっかりかわいさを無くしたため、今や『犬愛』に目覚めたお気楽主婦です。日々のちょっとしたこと、趣味で取り組んでいる『創作』を、このブログに書いていきたいと思っています。
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