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ももんたの発芽室

ももんたのつぶやきや、つたないですが、創作を掲載しています。
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36 永遠の感謝 【カリフォルニア・レモネード】 ⑤


36-⑤


「今ならまだ、未央ちゃんもお休みでしょう。仕事が再開されたら、
すぐに休みってわけにはいかないだろうし」


千波ちゃんは、寒くならないうちにどうだろうかと、

いくつかパンフレットを出してくれる。


「面倒だろ、啓太君。中谷家はこういう家なんだ」

「いえ、そんな……」


長くひとりで暮らしてきた啓太は、こういった家族行事のようなものを、

本当はどう思うだろうか。仕方がないから付き合っているだろうが、

正直、気を遣う以外なにもない気がする。


「実は、先週、職場にお酒が届いたんです」

「職場? 『コレック』に?」


啓太は頷くと、それが父からだったと教えてくれる。


「新潟のおいしい地酒だった。どうして職場に送ってくれるのかなと思ったけれど、
ほら、未央、今飲まないだろう」


啓太は私のグラスを見る。


「お父さん、気を遣ったのかなと今、思った」


兄夫婦が言うとおり、啓太がお酒が好きだと知った父は、

おいしいお酒を選び、送っていたという話。


「へぇ……そうなんだ」


千波ちゃんは、シャイなお父さんらしいねと私に言ってくれる。


「そんなことより、『おめでとう』って言って欲しいのに」


気を許してくれているのなら、認めて欲しい。

そういうと、兄が笑い出す。


「未央、お前、親父を知っているだろうが。あの親父が酒を買って、
啓太君に送る姿を想像しろよ。それだけで十分、認めていますってサイン、
出ているだろう」


兄は、味はどうだったかと啓太に聞いていく。


「なんだか、飲んでいいのかなと」


啓太はこっそり家に持ち帰り、棚の中にしまっていると言い始める。


「啓太さん、それはぜひぜひ飲んであげないと」


千波ちゃんは、お酒を味わって、『おいしかったですよ』と電話でもすればいいと、

『家族』との付き合い方をあまり知らない啓太に、アドバイスをしてくれる。


「その時に、莉子ちゃんがどんな感じなのか、未央ちゃんが頑張っていることとか、
お父さんに話してくれたらいいのよ、ね、奏樹」

「そうそう」


啓太はそうですねと言いながら、私の方を見る。


「知らなかった……そんなお酒のこと」

「うん……」


いつもなら、内緒の出来事を作るなと、少しカチンとくるけれど、

父から啓太へのプレゼントだと思うと、そんな気持ちにはならなくなる。

兄の言うとおり、言葉がいつも足らなくて、『まぁ、いいか』なんて台詞を、

使ったことがない父が、啓太のことを思ってくれただけで、

『おめでとう』を飛び越えていると、思わないといけない気がする。


「和貴、ほら、食べて」

「うん……ねぇ、未央ちゃん。莉子ちゃん、お口が動いているよ。
何かお話しているのかも」


和貴のかわいらしい問いに、私は、ミルクを飲んでいる夢でも見ているのかなと、

そう言い返す。


「ミルク?」

「そう……莉子ちゃんのご飯」


千波ちゃんの言葉に、和貴は『食いしん坊』だねと笑顔を見せる。

隣に座っていた兄が、以前啓太が言っていたように『未央の子だからな』と、

悪口を言ったので、私はその膝を結構強めに叩いてやった。





時期は10月ということで、決定。

新メンバーを含めた中谷家の旅行が、また計画されることになった。

今回の費用は両親が担当してくれて、仕切ってくれるのは、いつものように兄夫婦。

私たちはすっかり夕食をごちそうになり、3人で電車に乗り、

駅から我が家を目指す。

乳母車の中にいる莉子は、時々手足を動かしながら、機嫌良く過ごしていた。

千波ちゃんがお土産にくれた袋を持った私と、乳母車を押す啓太。

その前には、一緒に電車から降り、携帯で話し続ける若い女性がいる。


「ねぇ……信じられないでしょう。でも、強く出られないんだよね、
もしさ、もういいよ、お前なんてって言われたら、私、立ち直れないし……」


人の会話を立ち聞きしようと思っているわけではないが、彼女も色々と、

ストレスがたまっているのだろう。受話器の向こうにいる友人に、

これから彼とどう向き合うべきかと、必死に訴えている。


「私が色々話をしても、あいつ、面倒くさそうなんだよね。
俺は何も変わらないみたいなことを言って……」




『未央……お前、風向き変えてないか』

『啓太だからでしょう。啓太だから……』

『俺は何も変わらない。これからも変えようとは思わない』




なんだろう、急にこんな昔の台詞を思い出した。

互いに心を隠して、突っ張っていた頃のこと。


「そう……私となんて、真剣に付き合っていないのかもしれない」


いくら体を重ねても、唇を合わせても、心の奥が見えない日々は、

確かに不安と戦い続けてきた。

揺れて、怒って、泣いて、叫んで……


「ん?」

「うん……」


私は、少し前を歩く啓太の右手に触れる。


「どうした」

「いいの、ちょっと触りたかったから」

「触りたかった?」

「うん……」


啓太が少し笑顔を見せてくれて、

私は莉子の乳母車を押しているのだからあぶないよねと、触れた手を離す。

前を歩いていた女性は、信号待ちをせずに、電話をしながら左に曲がっていく。


「今、前を歩いていた女の人ね、昔の私みたいだなと思ったの」


どうにかしたいのに、どうしたらいいのかわからなくて、

愚痴ったり、怒ったり。


「彼の気持ちがわからないとか、不安とか焦りとか……
結局は、見せ合うしかないんだよね」


相手の思いは、想像しているだけでは理解できない。

ぶつかっても、遠回りをしても、さらけ出すしか、解決方法はないから。


「ねぇ、啓太。どうしてお父さんからお酒が来たこと、言わなかったのよ」


啓太は仕事柄、お土産などをもらうことも多かったため、

私自身、全然気づけなかった。


「言おうかなとも思ったんだけど」

「うん……」

「家ではなくて、職場だと言うことに、どういう意味があるのかなと、
それなりに色々、考えたからさ」


啓太はそういうと、照れくさそうに笑う。

私は、父も啓太も手探りしながら、距離を埋めようとしているのがわかり、

ただ嬉しくなる。


「ねぇ、明日は……何作ろうか」

「そうだな……今日のお義姉さんの料理、うまかったな」


私は、啓太の背中を軽く叩いてみる。

啓太は未央もそう思うだろうと、笑顔でそう言い返してきた。


「そう思うわよ、わかっています。千波ちゃんは私の全てにおいて、先生なの」


嫁としても、母としても、

私の近くにいてくれる、素敵な見本。


「明日も晴れるといいね……」

「そうだな……」


今日という素敵な1日が終わり、また明日がやってくる。

啓太と私、そこに小さな莉子が加わって……



『素敵な明日』



を、また迎えられるように。

私はそう思いながら、夜空の星を見た。




『プレラブ』 終わり




《プレラブ プチ知識 タイトル写真》

36 【カリフォルニア・レモネード】

★カクテル言葉は『永遠の感謝』

材料はライウイスキー 45ml、レモンジュース 15ml、ライムジュース 10ml
グレナデンシロップ 1tsp. シュガーシロップ 1tsp. ソーダ 適量 レモンスライス





最後までお付き合いありがとうございました。
これからも『ももんたの発芽室』に遊びに来てくださいね。
コメント、拍手、ランクポチなど、みなさんの参加をお待ちしてます。 (。-_-)ノ☆・゚::゚ヨロシク♪
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Author:momonta
育てた怪獣2匹は、すっかりかわいさを無くしたため、今や『犬愛』に目覚めたお気楽主婦です。日々のちょっとしたこと、趣味で取り組んでいる『創作』を、このブログに書いていきたいと思っています。
飲み物片手に、立ち寄ってくださいね。

なお、作品の無断転載やお持ち帰りはご遠慮ください。著作権は放棄していません。お願いします。

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